ガレリア・イスカ通信

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2015年 02月 28日

アンディ・ウォーホル展のポスター「Andy Warhol」(1974)

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1974年に東京と神戸の大丸百貨店でアンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)の日本初の本格的な回顧展「アンディ・ウォーホル展-Andy Warhol」(大丸東京店:1974年10月31日-11月12日、大丸神戸店:1974年11月14日-19日)が開催された際の告知用ポスター。これは大丸神戸店のもの。白地の用紙にシルクスクリーンで刷られており、ウォーホルが1966年に畜産動物に関する書物に掲載されていた「A good jersey head」という題の牛の頭部写真をもとに制作した版画「Cow」(F.C. II.11)を原画とする、ひとつのバリアントとして捉えられるかもしれない。と言うのも、このイメージは展示会場の壁紙としても使われており、ウォーホル側がポジフィルムを提供した可能性があるからだ。展覧会は、今世紀最大のスーパースターという謳い文句も手伝って、大きな関心を呼び、ウォーホルも展覧会に合わせて来日しているが、公的な美術館ではなく、デパートの催事場での開催であったことがウォーホルの自尊心を傷付けたようで、年譜にも展覧会歴にも記載がない。日本で生まれたこのポスターもウォーホルからは認知されておらず、いわば“父無し子”と言うことになる。

展覧会のことは東京の大学に通っていた友人から聞いたが、当時は初期フランドル美術や17世紀オランダ美術への関心の方が強く、それとは対極にあるような手法で絵画を成立させようとするウォーホルの姿勢が理解できず、上京してまで観てみたいとは思えなかった。

この展覧会によって現代美術への関心は多少なりとも高まったと言えるかもしれないが、それは未だ作品を観るという行為に留まっていて、ウォーホルや他の現代美術作家の作品を購入しよういう機運が一般にも広まるには更に10年の年月が必要であった。自分がウォーホルの作品を手にするのも丁度その頃で、最初に購入した作品は1967年にニューヨーク市のリンカーンセンターで開催された第5回ニューヨーク映画祭のポスター「Fifth New York Film Festival」であった。このポスターは1968年に開催された第2回ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ( 2nd International Poster Biennale in Warsaw)の“文化芸術を促進するポスター部門(Category of posters promoting culture and art)”で金賞を受賞している。限定500部とポスターにしては少ないが、1980年代の中頃になっても未だ多くが売れ残っていて、ニューヨークの小売業者は一枚40ドル(日本円で約1万円)で販売していたように記憶する。後にプラスティッックのシートに刷られた限定200部の版画ヴァージョン「Lincoln Center Ticket」(F.C.II.19)も手にいれたが、そちらの発色は、未額装だったのも幸いして、ポスターにも増して鮮やかであった。美しいものが手元にあると心が乱れるし、それをずっと手元に留め置くには責任を伴うので、愛着が湧く前に知り合いに譲ってしまい、今はどちらも手元にない。代わりにという訳ではないが、この牛のポスターを不憫に思い、しばらく手元に置くことにした。

●作家:Andy Warhol(1928-1987)
●種類:Poster
●サイズ:1030x730mm(B1)
●技法:Silkscreen
●発行:Daimaru Department Store Kobe
●制作年:1974
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ウォーホルの版上サイン

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図版:ウォーホル展の図録『アンディ・ウォーホル展-Andy Warhol』(朝日新聞社東京本社企画部編集)1974年、300x310mm。アメリカで開催された展覧会の図録に倣った装丁かと思うが、アルミ箔の上にウォーホルの自画像が印刷されている。



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by galleria-iska | 2015-02-28 20:30 | ポスター/メイラー | Comments(4)
2015年 02月 27日

ホルスト・ヤンセンの招待状「Max Beckmann」(1958)

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美術学校在学中にハンブルクにザントナー画廊(Galerie Sandner, Hamburg)開いた若い女性画廊主ビルギット・ザントナーを助けるためにホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が自らデザインした招待状。これは1957年から58年にかけてロータプリント(Rotaprint=Small Offset Printing )という小規模な平板印刷で制作した8種類の招待状のうちのひとつで、同画廊で1958年1月24日から2月15日にかけて開催されたマックス・ベックマンの版画展の招待状。オープニングは1月24日の午後6時となっている。ロータプリントという小規模なオフセット印刷機で印刷されたこの招待状には、オフセット印刷特有の網点がなく、一見リトグラフのようにも見える。

このタイプの招待状は日本国内ではお目にかかったことはないが、数年前、ヤンセンの初期の版画作品を数多く含むコレクションが出品されたドイツのパブリック・オークションのカタログを通して知った。亜鉛版エッチングを制作する以前の、デュビュッフェの影響を受けていた時期のヤンセンを知る格好の資料でもあり、そのユニークな表現に興味を持ったので、ポスターと同じような金額で入札してみたが、思いの外高い金額で落札されてしまった。通常、これらの招待状はエフェメラとして扱われているが、最近はヤンセンの版表現のひとつとして認知され始めてきているように思われる。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Einladung(Invitation)
●題名:Max Beckmann
●サイズ:297x199mm(A4)
●技法:Rotaprint(Small Offset Printing)
●発行:Galerie Sandner, Hamburg
●制作年:1958
●目録番号:Vogel 391(b)

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by galleria-iska | 2015-02-27 19:40 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2015年 02月 24日

ホルスト・ヤンセンのポスター「Pit Morell」(1969)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が1969年にドイツのデッサン家、版画家、画家、そして詩人のピット・モレル(Pit Morell, Jean, 1939-)の個展の告知用ポスターの下絵として制作したもので、同じ年にブロックシュテット画廊(Galerie Brockstedt, Hamburg)が企画・開催した展覧会「Akt im 20. Jahrhundert」のためのポスターと同様、ヤンセンには珍しくシルクスクリーンで作られている。様式的には亜鉛版エッチングのものをシルクスクリーンに置き換えただけのものであるが、1960年代に興隆したポップアートを初めとする現代美術の作家たちにとって欠くことのできないこの技法へのヤンセンの関心を窺い知ることが出来るという点では、貴重な作品と言えるかもしれない。

1939年生まれのモレルは、戦後ドイツの幻想絵画のグループに属し、メクセペルや他の幻想絵画の作家たちと、いくつもの版画集の制作に参加している。1964年からブレーメンの東15kmくらいのところにある芸術村ヴォルプスヴェーデで制作を行なうようになったモレルは、その年、恐らくブロックシュテット画廊ではないかと思うが、一足早くヴォルプスヴェーデ(Worpswede)の住人となったフリードリヒ・メクセペル(Friedrich Meckseper, 1936-)や幻想的でエロティックな画風で知られるゾンネンシュターン(Friedrich Schröder-Sonnenstern, 1892-1982)、そしてヤンセンと出逢う。翌年、フランクフルトのシドウ画廊( Galerie v. Sydow, Frankfurt)でデッサンの初個展を開催、ヤンセンの契約画廊であるハンブルクのブロックシュテット画廊からは12点組の版画集を出版している。このことから、このポスターの下絵は恐らくブロックシュテット画廊での個展を念頭に制作されたのではないかと思われる。が、実際にはポスターは制作されなかったようである。限定数は記されていないが、Meyer-Schomann夫妻によるポスターの目録によると、約100部ほど印刷されたとある。

画面中央には、ハイヒールらしき靴によって辛うじて女性であることを想像できるが、女性らしからぬ頑強な体躯の人物が描かれており、画面右下に描かれた警察官らしき人物の後頭部あたりに、ヤンセン自身が綴ったのであろうか、「警察は(モレルの妻の)ロジ(Rosi Morell)を愛し、ロジは警察を愛する」と、何やら意味ありげな文言から始まる詞書き(詩?)が入れられている。その下に1969年3月13日の日付とヤンセンの版上サイン。ポスターにおいてレタリングは情報伝達の重要な要素のひとつであるが、ここでは意匠化され、図の一部となっているため、画面のあちこちに配置されたピット・モレルの名は、俄かには判読し難い。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster
●題名:Pit Morell
●技法:Silkscreen
●サイズ:411x602mm
●限定数:ca. 100
●制作年:1969
●目録番号:MS.43
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詞書きの部分
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ピット・モレル(左)とヤンセン(右)の署名




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by galleria-iska | 2015-02-24 16:43 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2015年 02月 06日

ホルスト・ヤンセンの年賀状「Prosit Neujahr 1968: Ballade vom Herrn Latour」(1967)

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前にも一度取り上げたことがあるが、ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が1968年の年賀状として制作した折り本形式の絵本『Ballade vom Herrn Latour(Ballad of Lord Latour)』は、ドイツの作曲家カール・オルフ(Carl Orff, 1895-1982)の子供のための音楽(教育音楽)(注1))ムジカ・ポエティカ(Musika Poetica)所収の『Ballade vom Herrn Latour』を視覚化したもので、ヤンセンは蛇竜が守る高くて奥深い塔の中にひとり座る伯爵の娘を助け出すという、中世の騎士道物語風の童話(メルヒェン)に仕立てている。

ヤンセンは1961年に、この絵本の基となった表紙絵を含め6点のミニチュアサイズのエッチング(カール・フォーゲル編のカタログによると、縦94mm、横72mmとある)からなる同名の版画集を制作しており、それぞれのイメージに添えられた詞書き(テキスト)の末尾に、"Vive la, vive la, vive l'amour"と、「Vive l'Amour」または「Viva la Compagnie」として知られる“乾杯の歌”のリズム感のあるフレーズを付け加えることで、合いの手のような効果を生み出している。年賀状はそれを亜鉛版エッチングで新たに描き直したもので、版画集から表紙絵を省いた連続する5枚のパネルからなる。亜鉛版エッチングの特性の一つであるフラットな面表現を活かした画面は、細かな描線で描き込まれたエッチングの画面とは異なり、切り絵を思わせる二色刷りの画面となっている。そのため、画廊やパブリック・オークションでもリトグラフと誤って表記されていることがある。ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵する12点のホルスト・ヤンセンの作品のうち5点までが亜鉛版エッチングによるポスターであるが、同美術館も技法をリトグラフと表記しており、それも誤解を生む原因のひとつとなっているのではないかと思われる。日本の公立美術館はヤンセンのこの種の作品を評価の対象として捉えていないので、そのような誤解が生じる心配はないが。
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●作家:Horst Janssen
●種類:Leporello(Holding booklet)
●題名:Prosit Neujahr 1968: Ballade vom Herrn Latour
●サイズ:320x175mm(320x860mm)
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●印刷:Druck Christians, Hamburg
●制作年:1967
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5枚目のパネルの末尾には新年の挨拶"Prosit Neujahr 1968"が添えられている。縁の部分に版上サイン。



参考文献:
Spielmann, Heinz, Horst Janssen - Retrospective auf Verdacht, Hamburg, Museum für Kunst Gewerbe Hamburg, 1982, no.141, p.69.

注:

1.“教育音楽”は、カール・オルフが1930年代に作曲したもので、1950年から1954年にかけて、彼の門下のグニルト・ケートマン(Gunild Keetman)の協力を得て全面改訂し、ムジカ・ポエティカ(Musika Poetica)として纏めたもの。
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by galleria-iska | 2015-02-06 21:26 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)