ガレリア・イスカ通信

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2015年 07月 24日

アンデイ・ウォーホルのポスター「Warhol verso de Chirico」(1982)

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'Isn't life a series of images that change as they repeat themselves?' (Andy Warhol):人生って云うのは、繰り返すようにして変わっていく映像なんじゃないのかな(アンデイ・ウォーホル)

形而上絵画の画家としてダダイスムやシュルレアリスムに影響を与えたイタリアの画家で彫刻家のジョルジオ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico. 1888-1978)の展覧会「ジョルジョ・デ・キリコ -変遷と回帰-」が昨年、日本各地を巡回した。展覧会は観ていないが、会期中の11月23日に、NHKがそれに関連する番組「-謎以外の何を愛せようか-ジョルジョ・デ・キリコ」を“日曜美術館”で放映したのを観た。デ・キリコの変遷の背景を探る中から見えてきたのは、時代の趣味と権威に翻弄されたデ・キリコの姿であった。しかしながら、デ・キリコの言動からは彼の懊悩は窺い知れず、果たして真相はどうなっているのか謎のままである。前回取り上げたマグリットは1920年代にデ・キリコの作品「愛の歌」の複製を見て、“涙を抑えることができない”ほどの感銘を受け、シュルレアリスムに向かうことになったのだが、そのキリコは、1919年のイタリアでの最初の個展を、カラヴァッジオ(Michelangelo Merisi da Caravaggio, 1571-1610)やピエロ・デ・フランチェスコ(Piero della Francesca, c. 1415-1492)の研究で知られる20世紀イタリアを代表する美術史家で美術批評家のロベルト・ロンギ(Roberto Longhi, 1890-1970)に酷評され、1921年のミラノで初の個展も成功とは云えなかった。マグリットが「愛の歌」の複製を目にしたかもしれない1925年、皮肉にもパリで開催された個展で、詩から霊感を得た古典的な絵画がイタリアやーロッパの批評家から高い評価を得たことで、形而上絵画を放棄し、ルネサンスからバロックに掛けての古典絵画に傾倒することとなる。デ・キリコのこの態度は、何を選択するかという嗜好は別として、意味あるものは繰り返されなければならない、という真理を得たのかもしれない。そういう意味で、ポップ・アートの先駈けと言えなくもない。ウォーホルが言うように、繰り返すことによって人はそのイメージを記憶し、また意味を知ることになるのだ。

後年の作品(初期の作品のヴァリアントや複製)の評価に一石を投じることとなった展覧会(註1)のポスター。アンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)がデ・キリコの「アリアドネとイタリア広場(Andy Warhol:Italian Square with Ariadne、1982」をもとに制作した作品が使われているが、ウォーホルのオリジナル・デザインではない。デ・キリコの作品とデ・キリコの作品をもとに制作されたウォーホルの作品を展示するという展覧会は、ローマの中心にあるカンピドーリオの丘にあるコンセルバトーリ宮殿内の「オラツィとクリアツィの間(Sala degli Orazi e Curiazi )」で開催された。ウォーホルは、複製や反復という概念を作品制作にいち早く持ち込んだポップアートの先駈け的存在として、デ・キリコを高く評価しているが、これはアンドレ・ブルトンがシュルレアリスムの思想の具体的な事例を示すために行なった方法と相通ずるところがある。
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デ・キリコは1974年、イタリア系アメリカ人の事業家でデ・キリコとウォーホルのコレクターであったカルロ・ビロッティ(Carlo Bilotti)の計らいで、ポップ・アーティストのウォーホルとイタリア大使館で催された夜会で出会っている。その出会いはギリシャ、ローマを起源とするヨーロッパ文化と新生のアメリカ文化との邂逅tでありリンクとも言えるかもしれない。その4年後の1978年、デ・キリコの死を切っ掛けに、ビロッティはウォーホルにデ・キリコの形而上絵画をもとにした一連の作品の制作を依頼、1982年の展覧会となった。展覧会はその後、ドイツのハンブルクにあるカマー画廊(Galerie Kammer, Hamburg)に巡回している。デ・キリコやウォーホルを初め、ジャコモ・マンズーやラリー・リヴァースの作品からなるビロッティ・コレクションはすべて寄贈され、現在は、ヴィッラ・ボルゲーゼ内にある「アランチェーラ(オレンジ栽培温室)」から美術館に生まれ変わった「カルロ・ビロッティ美術館(Museo Carlo Bilotti Aranciera di Villa Borghese)」に収蔵され、観光名所のひとつとなっている。

●作家:Andy Warhol(1928-1987)
●種類:Poster
●サイズ:980x680mm
●技法:Offset
●発行:Electa Editrice, Milano
●印刷:Fantonigrafica, Venezia
●制作年:1982
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註:

1.
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図版:展覧会の図録、1982年。Oliva, Achille Bonito. WARHOL verso DE CHIRICO. 70 pages, including 20 color, and 20 b&w plates. 22x24cm, cloth. Milan, Electa, 1982.
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by galleria-iska | 2015-07-24 18:36 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2015年 07月 18日

ルネ・マグリットのポスター「Galerie Alexandre Iolas」

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前に一度、ベルギーの画家ルネ・マグリット(René Magritte, 1898-1967)のオリジナル・リトポスター(註1)を取り上げたことがあるが、今回のものは、マグリットの契約画廊で、アメリカを初め、フランス、イタリアなどに支店を持つアレクサンドル・イオラス画廊(Galerie Alexandre Iolas)から発行されたマグリットの絵画(原題不明)を用いた複製ポスター。1980年代にニューヨーク市のポスター・オリジナルズ(Poster Originals, Ltd., New York)から取り寄せたもの。もう一点、靴が途中から足に変容している作品「Le modèle rouge,1935」 (註2)を用いたポスターもあったはずなのだが、はてさて何所に行ってしまったのやら。

マグリットの絵画を見るとき、そこにシュルレアリストとしてのマグリット独自の表現法が伴わなかったとしたら、ただの写実的な絵画としか見えないのであるが、現実にあるものを題材にしながら、それを修辞学における比喩的表現によってそれぞれの関係を逆転させ、矛盾に満ちながらも神秘的で詩的な絵画空間を構築している。

マグリットはベルギーのブリュッセルとフランスのパリを何度も往来しながら、自らの様式を発展させていった作家で、シュルレアリスムの影響を受け、一枚の木の葉を題材にした作品を何点も描いている。そのひとつに、大地に立てられた一枚の葉が一本の木の輪郭として描かれているものがあるが、このポスターに使われた作品は、古典的とも思えるような技法で描かれた背景の中に立つ一枚の木の葉を描いたものだが、その写実的な描写がなお一層、視覚的な混乱を引き起こすこととなる。マグリットは修辞学でいうところの、物事の近接性にもとづく比喩である換喩(metonymy)を用い、木という存在を、その部分を構成する葉によって喩えているのだが、それは同時に、木の葉のような形をした木として、一種の隠喩(metaphor)的な表現と見えなくもない。それはもうひとつのポスターに使われた作品「Le modèle rouge,1935」ついても言える。

われわれの視覚は通常、慣れ親しんだ形態によってほぼ無意識に対象を認知しているのだが、それが逆に対象を見誤まったり、誤認したり、また錯覚を引き起こす原因ともなっている。それを文学や詩ではひとつの修辞法として用いることにより、大いなる想像力を喚起することなるのであるが、絵画において、絵を読むという行為は、多分に道徳的・教訓的なものであったり、宗教的なものであったが、マグリットは言葉とイメージの関係性を取り上げ、詩的な絵画空間を構築することに専念した画家である。その結果、歴史に埋もれることなく、常に世界の謎を見る側に問い続けており、デザインやグラフィックアートにも多大な影響を与えている。

●作家:René Magritte(1898-1967)
●種類:Poster
●サイズ:991x679mm
●技法:(Image:Offset, Lettering:Silkscreen)
●発行:Galerie Alexandre Iolas, Milano
●印刷:Grafic Olimpia, Milano
●制作年:Unknown
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ポスターの裏側に押されたGrafic Olimpiaのゴム印。Grafic Olimpiaはイタリアのミラノで画集や図録の印刷と出版を手掛ける出版社


註:

1.
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マグリットが1965年に毎年5月にパリで開催される展覧会「サロン・ド・メ(Salon de Mai)」の広報用にデザインしたオリジナルのリトポスター。印刷はパリのムルロー工房。

●作家:René Magritte(1898-1967)
●種類:Poster
●サイズ:655x465mm
●技法:Lithograph
●限定:ca.850
●発行:Musée d'Art Moderne de la Ville de Paris
●印刷:Mourlot
●制作年:1965


2.
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図版:アレクサンドル・イオラス画廊(Galerie Alexandre Iolas)から発行されたもう一点のポスター「Le modèle rouge」。印刷も同じGrafic Olimpia, Milano。この絵画作品について、マグリットは1938年の講演で、その図像について、次のように説明している。以下引用:

In a 1938 lecture, Magritte explained the imagery of Le modéle rouge as the "solution" to a "problem": "The problem of the shoes demonstrates how far the most barbaric things can, through force of habit, come to be considered quite respectable. Thanks to "Modèle rouge," people can feel that the union of a human foot with a leather shoe is, in fact, a monstrous custom" (quoted in Sylvester, David, René Magritte. Catalogue Raisonné. Volumes 1-6, vol. II, p. 205). The image, according to Werner Spies, was suggested to Magritte by Max Ernst, who took the idea from a Touraine shoemaker's sign.

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by galleria-iska | 2015-07-18 19:23 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2015年 07月 11日

パリの書店・画廊ラ・ユンヌの出版案内「La Hune」(1980's)

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前回の記事で少し触れたパリの書店ラ・ユンヌが閉店した件であるが、“仏造って魂入れず”という諺があるが、創業者のベルナール・ゲールブラン(Bernard Gheerbrant, 1918-2010)が退いてからのラ・ユンヌ(Librairie-Galerie La Hune, Paris)は、大資本がそのブランド名に商機を見出し、経営に乗り出してきたのだが、肝心要の哲学が抜け落ちてしまっていたのかもしれない。1944年に創業したラ・ユンヌは、ジャン・ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre),や妻のシモーヌ・ド・ボーヴォワール(Simone de Beauvoir)、アルベール・カミュ(Albert Camus )らの著名な文化人が出入りする書店として名を上げ、その後、抽象芸術を中心とする版画の出版と個展を行なう画廊へと変貌を遂げる。いわゆる書店・画廊としての活動は1991年までで、その後、フランス大手の出版社フラマリオンが店を引き継ぎ、目抜き通りであるサンジェルマン大通り(Boulevard Saint-Germain)に移転する。2012年、フランス大手の出版社ガりマール書店に売却されるが、サンジェルマン大通りが高級商店街になるにつれて、賃料が高騰したため、ルイ・ヴィトンに場所を明け渡し、元あったラバイ通りに移転する。それでも、高騰する賃料が経営を圧迫、先月6月14日の夜、観光客や地元民に惜しまれながらも、ついにそのシャッターを降ろした、ということであった。

自分がラ・ユンヌを訪れたのは、創業者のゲールブランが未だ経営に携わっていた1980年代の中頃で、個人的には、書店というよりも、版画の版元であり現代作家の個展を開催する画廊として捉えていた。そのラ・ユンヌから送られてきた出版案内をふたつ紹介する。どちらも1980年代に入ってからのもので、年記がないので定かではないが、1981年と1983年頃のものかと思う。ラ・ユンヌからはベルギー出身の画家で彫刻家のジャン=ミッシェル・フォロン(Jean-Michel Folon, 1934-2005)のポスター(案内には15フランとある)や当時パリで活躍していた画家で版画家の井上公三(Kozo Inoue, 1937-)氏のシルクスクリーンの版画作品(1000~1700フラン)を何点か購入した覚えがある。

●種類:Leaflet
●サイズ:298x209mm(298x419mm)
●技法:Offset
●発行:Librairie-Galerie La Hune, Paris
●発行年:1981(?)
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船好きで知られるベルギー出身の画家で彫刻家のフォロンがエッチングで制作したロゴイメージと画廊案内
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                         1983年頃の出版案内

●種類:Leaflet
●サイズ:298x209mm(298x419mm)
●技法:Offset
●発行:Librairie-Galerie La Hune, Paris
●発行年:1983(?)
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見開きのページには1983年頃に出版された井上公三氏の版画作品が掲載されている
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by galleria-iska | 2015-07-11 22:09 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2015年 07月 10日

デイヴィッド・ホックニーのメトロポリタンオペラ・ポスターの案内「The Parade Poster」(1981)

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イギリスの20世紀を代表する作家のひとりとなったデイヴィッド・ホックニー(David Hockney, 1937-)は1979年、ニューヨークのメトロポリタン・オペラ・ハウス(The Metropolitan Opera, New York)から、かつてピカソ(Pablo Picasso, 1881-1973)がバレエ・リュスの公演のために舞台美術と衣装を担当したことがあるエリック・サティの『パラード』、フランシス・プーランクの『テレジアスの乳房』、モーリス・ラヴェルの『子供と魔法』の舞台美術を依頼される。ホックニーは舞台美術の制作の傍ら、メトロポリタン・オペラ・ハウスのために、ミュシャ(Mucha)などに代表されるヨーロッパの劇場ポスターの伝統に倣い、2メートルを超す3点の大きなポスターを制作している。出版はロンドンのピーターズバーグ・プレス社(Petersburg Press, London)。「パラード」(1981年)はそのうちの一点で、23色刷りのシルクスクリーンで制作されている。これはそのポスター(206x89cm)の出版案内。ポスターには、赤、青、緑を主とする原色に近い色彩を大胆に用い、舞台の上でアクロバットを見せる道化師(Harlequin)が描かれている。この出版案内は、前から行方不明になっていたもので、数日前に、パリの書店ラ・ユンヌが6月14日に閉店したとの記事を目にし、書店・画廊の形態を取っていた頃のラ・ユンヌ(Librairie-Galerie La Hune)から送られてきた出版案内があったかもしれないと思い、資料用のダンボール箱を探しているときに、画廊や美術館の出版資料を挟んであるファイルの中から一緒に出てきた。もともと記憶力はあまり良い方ではないが、最近は資料ひとつ見つけるのに、何時間も掛かってしまう...

ホックニーが三つの作品の中からエリック・サティの『パラード』を選んだのは、敬愛するピカソが1917年にパリで初演された際の舞台美術を担当したからに他ならないが、舞台美術を制作中の1980年にニューヨークの近代美術館(MoMA)で開催されたピカソの大回顧展を見て、大いに感銘を受けたこともポスター制作の刺激になったに違いない。

●作家:David Hockney(1937-)
●種類:Leaflet
●サイズ:233x119mm(233x238mm)
●技法:Offset
●発行:Petersburg Press, London
●制作年:1981
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by galleria-iska | 2015-07-10 21:40 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)