ガレリア・イスカ通信

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2016年 07月 30日

勝原伸也のポスター「Shinya Katsuhara」(1995)

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浮世絵版画師の勝原伸也(Shinya Katsuhara,1951-2015)大兄が鬼籍に入られて早一年になる。明日7月31日は一周忌であるが、墓参りは叶いそうもないので、大兄を偲んで、いただいたポスターを取り上げたい。このポスターは、大兄の父親の郷里である広島県三原市で1995年に開催された浮世絵版画展の告知用ポスターで、1987年に復刻した江戸時代末期の浮世絵師、一勇斎 國芳(歌川 国芳)(Ichiyûsai Kuniyoshi, 1797-1861)の大判三枚続き(triptych)の作品『讃岐院眷属をして為朝をすくふ図(Tametomo Rescued by Tengu sent by Sanuki-in)』(1851~52年頃)(註1)左図の部分が使われている。この絵は、国芳の作品の中でも、一、二を争う有名な絵で、三枚に連なる大きな鰐鮫の金属的な質感を持った渦巻状の鱗を彫るのに苦労し、彫りだけで五ヶ月近くもかかったと語っている。とは言え、勝原は他の作品にも見られるのだが、単に精巧な復刻を目指していたわけではなく、オリジナルでは濃く摺られている烏天狗の刷りを薄い墨で摺るという独自の解釈を加えている。
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       オリジナル                                 復刻

●作家:Shinya Katsuhara(1951-2015)
●種類:Poster
●サイズ:725x514mm
●技法:Offset
●発行:Mihara City & Mihara City Board of Education
●制作年:1995
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1987年復刻の一勇斎国芳『讃岐院眷属をして為朝をすくふ図』(木版師 勝原伸也の世界より)

註:
1.曲亭馬琴の『椿説弓張月』中の場面で、嵐に襲われ難破した源為朝父子を讃岐院(崇徳上皇)の眷属である鰐鮫と烏天狗が救う。

参考文献:
ばれんの会編 『木版師 勝原伸也の世界(Shinya Katsuhara, The Ukiyo-e Craftman)』平凡社、1993年
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by galleria-iska | 2016-07-30 19:01 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2016年 07月 20日

ミロのトートバッグ「Fondation Maeght St. Paul」(1973)

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作家デザインのショッピングバッグと言うと、ポップアートの巨匠であるアンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)とロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein,1923-1997)の両者が、1964年にニューヨーク市のビアンキーニ画廊(Bianchini gallery, New York)で開催された大量生産・大量消費社会の中心的存在であるスーパーマーケットをひとつの社会的風景として捉えた展覧会「American Supermarket」展の際に制作した、市販の紙製のトートバッグを支持体とする版画作品が思い出される。ウォーホルはキャンベルスープのトマト缶をモチーフにした「Campbell's soup can on shopping bag」(F.S.:II.4)、リキテンスタイン(Roy Lichtenstein, 1923-1997)は自身の絵画を基にした「Turkey Shopping Bag」(C.R.:App. 4)で、ともにビアンキーニ画廊から出版されている。彼らはスーパーマーケットという大量生産・大量消費社会の象徴的存在の本質を表現活動によって炙り出そうとしているというよりも、むしろ、自然が生み出した風景に変わる新しい風景として捉え、それを感情を排し、クールで即物的に表現しようとしているかのように見える。ウォーホルは二年後の1966年に、今度はボストン現代美術館(ICA)のポスターとして、同じキャンベルスープ缶をモチーフとする「Campbell's soup can on shopping bag」(F.S.:II.4.A)をデザインしている。一方、リキテンスタインは20年以上経った1988年に、ウォーカー・アート・センター(The Walker Art Center)がミネアポリスに設置した彫刻庭園の開園を祝して、ミネアポリスのデイトン・ハドソン・デパート(Dayton Hudson Department Store Company)が出版したショッピング・バッグ(註1)のデザインを行なっている。

時代が下り、自然保護や環境問題が強く叫ばれる時代になると、1992年、コンセプチュアル・アーティストのバーバラ・クルーガー(Barbara Kruger, 1945-)が、使い捨ての紙製ではなく、自身の展覧会に合わせてデザインした「Business As Usual」という、繰り返し何度も使えるキャンバス地のトート・バッグをデザインしている。キャンバス地にシルクスクリーンでプリントされた"Business As Usual(変わり栄えしない、日常生活)"という言葉と牙をむく狼の横顔の組み合わせが、パラドキシカルでありながら、消費社会に埋没していく生活に対して牙を剥くという、意識変革を訴えかける作品となっている。

今回取り上げるのは、1973年にジョアン・ミロ(Joan Miro, 1893-1983)のオリジナル・リトグラフをもとに作られたキャンバス・トート・バッグである。トートバックとしては少し小さめであるが、データを失ってしまったので、正確なサイズは不明とする。バッグにはミロが同年、南フランスのサン=ポールにあるマーグ財団の美術館で彫刻と陶器による展覧会を開催した際に刊行された図録ために制作した二点のオリジナル・リトグラフのうちのひとつが使われており、バッグの両面にシルクスクリーンで刷られている。片側(表)にはミロの版上サインが入っている。このバッグが展覧会に合わせて作られたのであれば、バーバラ・クルーガーより20年近くも早いことになり、先駆的な試みであったと言えるかもしれないのだが、このバッグに関する記述がどこにも見当たらず、詳細は分からない。

●作家:Joan Miro(1893-1983)
●種類:Canvas tote bag
●サイズ:???x???mm
●技法:Silkscreen
●発行:Fondation Maeght, St. Paul
●制作年:1973(?)

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註:

1.同社はこのショッピング・バッグの出版に先立ち、ウォーカー・アート・センターと共同で1984年にフランク・ステラ(Frank Stella)、1985年にデイヴィッド・ホックニー(David Hockney)とアニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)にショッピング・バッグのデザインを依頼している。
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by galleria-iska | 2016-07-20 18:42 | その他 | Comments(0)