ガレリア・イスカ通信

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2017年 03月 31日

ニキ・ド・サンファルの彫刻「Inflatable Rhinoceros」(1999)

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虫歯の治療が一段落し、食事に難儀しなくてもよくなった。すると、どういうわけか今度は連れ合いに歯痛が発生、毎日、シーハー、シーハーと辛そうにしている。欠伸は移るというが、歯痛もそうなのだろうか???

閑話休題、以前、アメリカの1980年代を代表するポップ・アートの作家キース・へリング(Keith Haring, 1958-1990)が自ら開いたポップ・ショップのために制作したプラスティックのオブジェ「Inflatable Baby」を取り上げたことがあるが、今回は、1968年から既にこのタイプの彫刻の制作を行なっている、スイスの彫刻家、画家ジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely, 1925- 1991)の影響を受け、彫刻作品も数多く手掛けたフランスの画家、彫刻家ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle, 1930-2002)の作品を取り上げてみたい。1999年、フランスの大手出版社のひとつ、フラマリオン書店(Flammarion, Paris)のグッズやオブジェ等の限定物の出版を手掛ける《Flammarion 4》依頼で制作した「動物シリーズ」のうちの『サイ(Rhinocéros)』は、ポリ塩化ビニルプラスチック= PVC plastic(polyvinyl chloride plastic)を素材として使い、空気(などの気体)を入れて膨らませる彫刻(Inflatable Sculpture)である。ニキはこの彫刻をデザインする前年、同じモチーフによるシルクスリーンの版画作品(注1)を制作している。彫刻ではニキ作品の特徴であるカラフルな色彩に彩られた面とフランス20世紀のアンフォルメルの画家、彫刻家ジャン・デュビュッフェ(Jean Dubuffet, 1901- 1985)を彷彿させるモノクロームの面とに分けられているのだが、版画作品では、彫刻の両側面が交じり合ったような画面構成となっている。彫刻の二つの側面はそれぞれ、道化師の化粧や衣装に見られるような、明と暗、陰と陽といった相反する二つ性質を表しているかのように見えるが、見る側は常にどちらか一方しか見ることができないというジレンマを抱えることになる。ただし、そこに何か教訓めいたものを読み取る必要はないであろう。この彫刻でニキは、版画作品を出発点とし、その二つの異なる構成要素を、サイの体躯を使った二つの画面構成へと発展させている。

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既に絶版となっているこの彫刻の収納袋には、《このオブジェは浮き輪でも玩具でもなく、2歳未満の子供には与えないように》との注意書きが記されているのだが、比較的安価であったため、芸術作品として接した購入者は少なかったのではないだろうか。反対に、子供にとっては格好の遊び道具であり、それ故、多くのものが傷み、失われてしまったと思われる。裏を返せば、制作者や販売者はそれを見越して制作数を決めていたのかもしれない。ただその前提として、マルティプル・アートの概念に則って、一部の愛好者向けに小部数を高価で販売するよりも、より多くの人の目に触れさせることで、その認知度を高めようとする意図があったと思われる。そして安価な物であればあるだけ、時間の経過とともにその稀少性が自然と高まっていくことは十分予測可能である。そしてその思惑(!?)は見事的中、稀少性が結果としてオリジナル作品としての評価を押し上げるベクトルとして働いている。先に挙げたヘリングのプラスティックのオブジェ「Inflatable Baby」と同様、当初、玩具扱いだったものが今やパリのドルオー(Paris Drouot) やクリスティーズ(Christie's)のオークションにも登場しているのだから、大したものである。尤も、高価な逸品にのみ興味を抱く大コレクターには無縁の存在なのかもしれないが。

●作家:Niki de Saint Phalle(1930-2002)
●種類:Inflatable Sculpture(Sculpture gonflable)
●題名:Rhinoceros(Rhinocéros)
●技法:Silkscreen on PVC plastic(Sérigraphie sur plastique PVC)
●サイズ:680x1070mm
●発行:Flammarion 4, Paris
●制作年:1999
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                          ニキの版上サイン


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註:

1.
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図版:Niki de Saint Phalle 「Rhinocéros」Silkscreen in colors, 1998, Edition:100, Size:430 x 560mm
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by galleria-iska | 2017-03-31 20:49 | その他 | Comments(0)
2017年 03月 21日

ホルスト・ヤンセンのノートカード「Verlag St.Gertrude」

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昨年暮れから5年(!)あまり治療を我慢していた虫歯が悪化し、満足に食事がとれなくなってしまった。残った歯を使ってなんとか食べようとするも、うまく咀嚼できず、味気のない食事を続けていたのだが、激しい痛みを伴うようになり、水分で流し込むしかなくなってしまった。そうなってようやく歯科医院の戸を開いたのだが、予約制ということで、それからまた一週間、毎日激痛と闘う羽目に。一噛み毎に一時間ぐらい痛みに堪えなくてはならず、痛みと空腹で何もする気がなくなってしまった。一週間後にようやく応急処置として虫歯に詰め物をしてもらい、僅かづつではあるが、食事がとれるようになった。先ずは、めでたしめでたしと。

ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)専門の出版社として1984年にヤンセンの住むハンブルクに設立されたザンクト・ゲルトルーデ出版(Verlag St.Gertrude GmbH, Hamburg)は、これまでに200冊近いヤンセンの作品集や多数のオフセット印刷よるポスターを刊行してきた。2006年には画廊も併設し、ヤンセン以外にも、ディーター・ロート(Dieter Roth, 1930-1998) ユルゲン・ブロートヴォルフ(Jürgen Brodwolf,1932-) アーノルフ・ライナー(Arnulf Rainer, 1929-)といったユニークな表現方法で知られるドイツ圏の現代作家の作品を紹介している。 このノート・カードは随分前に出版社からいただいたのだが、記念にと、ずっと使わずにとってあった。出版社が入るゴールドバッハ通り(Goldbachstraße)沿いの建物とその前を行く人々の様子を即興的に描いた素描(1987年3月1日の日付入り)が使われており、同社発行の販売カタログやホームページにも使われていることから、自社の広告用に制作を依頼したものかと思われる。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Note card
●サイズ:148x210mm
●技法:Offset
●発行:Verlag St.Gertrude GmbH, Hamburg
●制作年:1987
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by galleria-iska | 2017-03-21 15:23 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)