ガレリア・イスカ通信

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2017年 10月 24日

バスキア、クレメンテ、ウォーホル展図録「Collaborations」(1984)

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日本国内では新興実業家が高額で落札したことでしかマスコミに取り上げられない夭折の画家ジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat, 1960-1988)であるが、日本中が沸騰していた時期には街にポスターが溢れて(?)いた。それより少し前の1983年に限定24部で出版された巨大なシルクスクリーンの版画作品「Back of the neck」(128x259cm)も未だ100万円台で購入可能であった。何かインパクトのある作品を探して欲しいという知り合いの依頼で、作品を取り扱っていたニューヨーク市の出版社に注文したのだが、版元が買主を選んで注文を受ける、というような嘘かホントか分からない条件を付けていて、結局購入することが出来なかった。その後すぐに400万円に跳ね上り、1000万円を超える頃には関心も無くなってしまった。この記事を書くに当たって、最近の価格動向を調べてみると、恐ろしいことになっていた。2011年2月11日のロンドンのクリスティーズ(Christie's London)のオークションに出品されたものは、評価額10万~15万ポンドを遥かに超え、手数料込みで約3500万円(£277250)で落札されたのだが、その後も上がり続け、2016年11月18日にニューヨークのサザビーズ(Sotheby's New York)のオークションに出品されたものは、評価額30万~40万ドルのところ、手数料込みで約6340万円($576500)で落札されているのだ。もっとも、これぐらいにならないと大金持ちは関心を示さないのかもしれないが...。

話を本題に戻そう。小さい頃から骨董好きで収集していた画商のブルーノ・ビショフベルガー(Bruno Bischofberger, 1940-)が1963年、スイスのチューリッヒに開いたブルーノ・ビショフベルガー画廊(Gallery Bruno Bischofberger, Zürich)は1965年、アメリカで大きな潮流となっていたポップ・アートの作家(Andy Warhol, Roy Lichtenstein, Robert Rauschenberg, Jasper Johns, Tom Wesselmann and Claes Oldenburg)の作品による展覧会を開催、その翌年には早くも旧東ドイツのドレスデン出身で、ポップ・アートの影響を受けつつも多種多様な画風を展開するゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter, 1932-)の個展を開催している。そして1968年にはアンディ・ウォーホルと1987年まで続く優先的購入契約を結んでいる。

現代美術を扱う画商としては当然のことかもしれないが、常に時代の潮流を敏感に取り込むビショフベルガーは1980年代に入ると、ニュー・ペインティングとも呼ばれる「新表現主義(Neo-Expressionism)」の作家(Jean-Michel Basquiat, Julian Schnabel, David Salle, Francesco Clemente, Enzo Cucchi)らの個展を開催している。中でも早くからバスキアの才能を認め作品を収集していたビショフベルガーは1983年、彼をアンディー・ウォーホルとフランチェスコ・クレメンティに引きあわせ、共同制作(Collaborations)を提案、1984年にその展覧会を開催している。これはその展覧会の図録として、チューリッヒ郊外の風光明媚な町、キュスナハト(Küsnacht)に置かれたブルーノ・ビショフベルガー画廊の出版部門(Edition Gallery Bruno Bischofberger, Küsnacht/Zürich)から刊行されたもの。布装丁で、三人がサインを入れたものもあるようだが、今手元にあるものにはサインは入っていない。27歳で夭折したバスキアとウォーホルの生前に刊行されたものであるということで、欧米の古書店ではかなりの値(5万~8万円)を付けている。この展覧会の翌年にビショフベルガーはバスキアの個展を開催、1000部限定でバスキアのサイン入りの図録を刊行している。こちらは先の理由に加え、サインそのものが稀少価値と見なされており、現在数千ドルの値が付いている。まだそれほど高くない時に入手したのだが、田舎暮らしが故に売却の時期が読めず、値上がりの気配が見え始めた頃に手放してしまった。

●作家:Jean-Michel Basquiat(1960-1988), Francesco Clemente(1952-), Andy Warhol(1928-1987)
●種類:Exhibition catalogue
●題名:Collaborations
●サイズ:303x218mm
●技法:Offset
●印刷:Schudeldruck AG, Riehen
●発行:Edition Gallery Bruno Bischofberger, Küsnacht/Zürich
●制作年:1984
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                           裏表紙に使われているのは《Alba's Breakfast, 1984》の部分
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by galleria-iska | 2017-10-24 13:12 | 図録類 | Comments(0)
2017年 10月 03日

キース・ヘリングのポスター総目録「Keith Haring - Posters」(2017)

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キース・ヘリング(Keith Haring, 1958-1990)のポスター愛好家待望(?)の総目録(カタログ・レゾネ)が刊行された。ヘリングが1982年から1990年までにデザインしたオリジナルポスター100点を収録したもので、全作品がカラー図版で紹介されている。最近ようやく知ったのだが、キース・ヘリング(Keith Haring, 1958-1990)が生存中にデザインしたオリジナルポスターによる展覧会「Keith Haring :Posters」が、1877年に設立された美術(版画やポスターを含む)、工芸、デザイン、写真に関する広範囲のコレクションを持つハンブルク美術工芸博物館(MK&G-Hamburg/Museum für Kunst und Gewerbe Hamburg)で11月5日まで開催されており、この総目録「Keith Haring - Posters」は、その展覧会に合わせて美術書の出版を得意とするドイツのプレステル出版(Prestel Verlag, München)から刊行されたものである。編著者はハンブルク美術工芸博物館の版画およびポスター部門の部長を務めるユルゲン・デリング博士(Dr. Jürgen Döring)で、これらのポスターを博物館に寄贈したハンブルクの収集家クラウス・フォン・デア・オステン(Claus von der Osten)氏も編集に加わっている。内容は同じだが、博物館で販売されている同名の図録(註1)とは装丁が若干異なっている。展示公開されている100点のポスターの内訳は、23点が社会政治的な事柄に関するもの、26点が文化的行事に関するもの、そして19点が自身の展覧会の告知用となっている。ほぼ同時進行で、同じくクラウス・フォン・デア・オステン氏から寄贈されたロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg, 1925-2008)のポスター160点のうち120点を展示公開する「Robert Rauschenberg: Posters」も10月8日まで開催されているが、こちらの図録は出ていないようだ。

ハンブルクの収集家クラウス・フォン・デア・オステン氏のコレクションをもとにした展覧会「Haring Posters Short Messages」は既に2002年から2003年にかけてドイツ国内を巡回するかたちで開催されており、ハイルブロン市立美術館(Städtischen Museen Heilbronn)の学芸員であるマルク・グンデル博士(Dr. Marc Gundel)編の図録が、同じくプレステル出版から 2002年に図録(註2)が刊行されている。また2003年にはその改訂版が刊行されている。内容はヘリングが1982年から1990年かけてデザインしたオリジナルポスターの総目録となっており、ほぼ同じ内容といえる。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Catalogue raisonné
●編者:Dr. Jürgen Döring & Claus von der Osten
●サイズ:300x240mm
●発行:Prestel Verlag, München
●制作年:2017
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ポスターの寄贈の話が、美術館や出版社を巻き込み、その成果が市民に還元されるという一連の動きに何かしらの希望を感じる。日本でも相続税の軽減という理由であったにせよ、個人コレクションを積極的に受け入れようという動きがないではない。ただしポスターやエフェメラといったものへの評価は欧米ほど高いとは言い難く、前にも書いたと思うが、20世紀のスペインを代表する画家ジョアン・ミロ(Joan Miró, 1893-1983)のオリジナルデザインのポスターを百点以上を収集されていた方が公立美術館に寄贈を申し出たところ、ポスターなんかいらない、と取り合ってくれなかったことがあった。公開の方向性だけでも示してくれても良かったのではないかと思うが、残念ながら、篤志家と呼んでもよいその方のミロのポスター収集に注がれた情熱や時間は一切顧みられることはなかったのである。実りのない話ばかりしていても暗くなるばかりなので、他に目を向けてみるのも手かもしれない。最近、美術系の大学に次々と付属の美術資料館が併設されており、ポスターの収集にも力を入れているところもあるので、そちらに話を持っていった方が良かったかもしれない。なんとも残念な話である。

註:

1.
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図版:展覧会に合わせてハンブルク美術工芸博物館で販売されている図録。Jürgen Döring, Claus von der Osten, 128 pages, 300x240mm, 120 color illustrations published by Verlag Prestel in 2017.

2.
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図版:2003年に刊行された図録「Haring Posters Short Messages」の改訂版(ハードカバー)。Marc Gundel and Claus von der Osten, Revised edition of "Haring Posters Short Messages " published by Prestel Verlag, München in 2002. 300x240mm, 96 pages, text in German and English. 84 color and 16 black & white illustrations. Catalogue raisonné of Haring posters from 1982-1990. Published in conjunction with the expositions at the Versicherungskammer Bayern(November 2002 - January 2003), Kunsthaus Kaufbeuren, Kaufbeuren(August - September 2003), etc.
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by galleria-iska | 2017-10-03 18:00 | キース・へリング関係 | Comments(0)