ガレリア・イスカ通信

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2010年 08月 08日

キース・へリングのビニールバッグ「Pop Shop Plastic bag」(1985)

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キース・へリングが1986年のポップショップのオープンに向けてデザインしたトレードマークをアイコン化したキャラクターは、ステッカーやピンバッジ、紙袋に大量に刷りこまれ、また人目に触れる機会の多いビニールバッグにも使われている。モノクロ・ヴァージョンがオリジナルであるらしく、その後、カラーヴァージョンが幾つも制作された。キースの単純な輪と明快な色彩は、シルクスクリーン印刷によってさらに高められ、多くの若者の心を捉えた結果、街中、海辺、学校などでポップショップの宣伝に一役買うことになったことは想像に難くない。これまでに六種類のカラーヴァージョンの存在を確認しており、Pop Shop Tokyoヴァージョンを入れると七種類となる。

ひとつの美術作品として提示された訳ではないこのビニールバッグに刷り込まれた図像が、純粋な美術表現として意識化されるには、それが大量に生産され、消費されるという前提、つまり時間経過を伴う必要がある。これは通常の美術作品における図像の流布とは逆の発想であるが、現代社会においては、美術作品が一部のパトロンのために作品が作られることは無くなり、社会そのものが大量生産と消費によって維持されていることを前提にすれば、それはポップアートの方法論を更に先鋭化したものと言える。ヘリングは図像を作品というよりはメッセージと捉えており、従来の美術愛好家のような特定の層にではなく、簡潔な表現と視覚的な美しさ、そして端的なメッセージを理解できる全ての人々にたいして広く提示することを目指していた。ヘリングの図像は、ひとつの記号として認知されることで意味を終え、その図像は記憶として一端意識の底に降りていくことになる。しかる後、その物が与えられていた意味や役割、機能が失われると、今度は、物としての有り様ではなく、その物が生まれた社会背景や時代精神を象徴する意味を帯びた、新たな記号性を獲得するのである。そのとき図像は物に与えられた意味を超えた象徴的存在としての価値を獲得する。ヘリング自身においては、図像の流布とは、それが芽を出すかどうかは未知数ではあるが、ある意味布教活動と同じであると言える。ヘリングがそのことの意味を自己の作品(製品)の中に忍び込ませているとするならば、それを取り出すことで、ヘリングのポップアートの文脈を如何に自己表現に取り込んでいる作家であるかを知る手掛かりとなる筈である。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●題名:Pop Shop Plastic bag
●サイズ:484x425mm
●技法:Silkscreen
●製造:PAK 2000, New Hampshire

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製造元は同じだが、前の三点よりも更に色彩が強烈になっており、人体のプロポーションにも若干の変化が見受けられる。また、ポップショップのトレードマークがオリジナルとは異なり、キースのサイン(版上)も年記も記されていない。前の三点はキースの描いた画面比に合わせたフォーマットで作られているが、こちらのビニールバッグは、意図的かもしれないが、画面の収まりを無視したところがあり、そのぶん窮屈感を覚えるので、フォーマットに合わせて画面をトリミングした、ということも考えられる。こちらには三種類のカラーヴァージョンがある。

ビニールバッグを製造した《PAK 2000》は、1972年にスイスの大手の包装用容器メーカーによって設立されたビニール製の買い物袋の製造メーカー。紙製の買い物袋や包装箱の製造も行なっており、顧客には世界的なブランドが名を連ねている。
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# by galleria-iska | 2010-08-08 23:17 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2010年 08月 07日

キース・へリングの招待状「Party of Life」(1986)

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キース・へリングが、1985年に建築家、磯崎新による改装で古い映画館からディスコ・クラブに変身したパラディアム(Palladium)を会場に、親しい友人や関係者を集めて行なった誕生パーティ《Keith Haring's third annual "Party of Life"》への招待状。パーティは1984年から1986年まで計三回開催され、招待客にはキース・へリング オリジナルデザインの招待状が送付された。1986年の招待状は、ショートパンツと缶バッジ2個で、入場の際には入場券の代わりに缶バッジを提示することになっていた。このデザインは同じ年に発表されたスウォッチの文字盤にも使われている。

●作家:Keith haring(1958-1990)
●種類:Invitation
●技法:Silkscreen
●発行:Keith Haring
●制作年:1986
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パーティの案内

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缶バッチ(Can badge):[サイズ]直径32mm、側面に《Keith Haring TM》

1984年から86年までの招待状は以下の通り:

第一回の1984年は、タンクトップとハンカチ
第二回の1985年は、タンクトップと缶バッジ、それとジグソーパズル。
第三回の1986年は、ショートパンツと缶バッジ二個

招待状としてはユニークな形態を取っているこれらの招待状も、その意味では“エフェメラ”の一種と考えることができる。ただメッセージの伝達という一義的な目的の他に、それぞれの“もの”としての意味も兼ね備えていることから、近い将来、マルチィプルの中に含められるのではないかと思われる。
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# by galleria-iska | 2010-08-07 17:57 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2010年 08月 02日

キース・へリングの塗り絵本「Coloring Book」(1985)

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キース・へリングの塗り絵本:オリジナル版、表表紙(Front cover)

キース・へリングがニューヨークにポップ・ショップを開く前の年に制作した塗り絵本で、出版データの記載が無いため、私家版での出版ではないかと思われる。1992年に《Fotofolio Inc.》より表紙をカラーにしたトレード・エディション「The Keith Haring Coloring Book:ISBN: 1881270513 / 1-881270-51-3」が出版されている。この絵本の続編となる「Kieth Haring's Fun Book」が、同じ1985年に、フランスのボルドー現代美術館(CAPC、 Musée d'art contemporain de Bordeaux )から限定2000部で発行されており、1992年には追悼版として第二版(限定1500部)が発行されている。

●作家:Keith Haring, 1958-1990
●種類:Book
●題名:Coloring Book
●サイズ:304x304mm
●出版:Private edition
●制作年:1985


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裏表紙(Back cover)
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# by galleria-iska | 2010-08-02 22:25 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2010年 08月 01日

キース・へリングのステッカー「Le Mans 84」(1984)

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1984年のル・マン24時間(耐久)レース(24 heures du Mans )には、当時若干26才のキース・ヘリング(Keith Haring, 1958-1990)と同年輩のフランス人画家フランソワ・ボワロン(François Boisrond, 1959-)が、アーティスト・イン・レジデンス(Artist-in-residence)として招聘され、公式ポスター、ティーシャツ、ステッカー、バッジのためのデザインと、レース中に会場で子供用の車に即興ペイントを行なっている。へリングの公式ポスターはネット上で見ただけだが、フランスの映画ポスターなどに使われる大型のフォーマット(120x160cm)で作られており、かなりの迫力であったと思われる。ステッカーも同じ構図で作られているが、背景色が赤からピンクに変更され、黄色も幾分薄くなっている。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Sticker
●題名:Le Mans 84
●サイズ:114x135mm
●技法:Silkscreen
●制作年:1984

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図版:キース・へリングのシルクスクリーンポスター「Le Mans 84」
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# by galleria-iska | 2010-08-01 20:51 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2010年 07月 31日

キース・へリングのステッカー「Pop Shop」(1985)

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キース・へリングが芸術の逆説的提示として始めたポップ・ショップ、そのオープンに際しデザインしたトレードマークは、1966年にロイ・リキテンスタインが「ニューズウィーク」誌の表紙絵として描いた、爆発とPop!の文字の組み合わせによる『POP!』を直接的なインスピレーションとしつつ、リチャード・ハミルトンが1956年に制作したポップアートの源泉とも言われるコラージュ『Just what is it that makes our today's homes so different,so appealing』に精神的な感応を示している、と書いてみたものの、実際はどうなのであろうか。《Pop Shop》の文字は五芒星と呼ばれる守護の意味や星を示す図形の中に書き込まれている。へリングとの接点はないが、自然が創り上げた秩序とか調和を示す五芒星とそれを内接する正五角形に大きな関心を持っていたのが版画家の長谷川潔である。このステッカーでは、トレードマークを頭部に乗せた人物が描かれており、その胸に付けられ記号を“エックス”と見るか、“十字”と見るかによって、この人物が意味するものが異なってくる。ひとつはそれがキリスト的なものの表象として,もうひとつは自らが“ポップスター”になることへの意志の顕れとするものだが、へリングは、それを曖昧にすることで、二つの意味を同時に表現しようとしていたのではないかと思われる。そしてへリングは、このロゴマークを、ポップショップのイメージキャラター、つまりアイコンとしてシンボライズすることによってイメージの浸透性をさらに高めようとしている。図像はチープなステッカーや商品を入れる紙袋、バッジ、ビニールバッグなどに大量に刷り込まれた、ポップアートの土壌となった大量生産・大量消費へとアートを還元し、その精神を循環させる一方、その心の奥底には、何かしら伝道的な気持ちが込められていたのではないかとも思える。

●作家:Keith Haring(1958-1991)
●種類:Sticker
●題名:Pop Shop
●サイズ:127x114mm
●技法:Silkscreen
●発行:Pop Shop, New York
●制作年:1985



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# by galleria-iska | 2010-07-31 22:17 | キース・へリング関係 | Comments(0)