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ガレリア・イスカ通信

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2011年 05月 31日

菅井汲のポスター「Galerie H. Le Gendre」(1957)

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パントル・グラヴールとして国際的に通用する数少ない日本人画家、菅井汲(Sugai Kumi, 1919-1996)であるが、現在の版画の価格は必ずしもその評価に見合ったものであるとは言えない。ポスターに至っては評価すら無きに等しい。その菅井が、1957年の3月1日から30日かけてサンジェルマン・デュプレのゲネゴ通りにあるル・ジャンドル画廊(Galerie H. Le Gendre)で個展を開催した際に、告知用に制作したオリジナルのリトポスター。ポスターのイメージは前の年に描かれた油彩画「Homme」に基づいており、同時に50部限定のリトグラフ「OTOKO」も制作され、同画廊から出版された。ポスター(760x563mm)も、リトグラフ(650x500mm)と同様、B.F.K.リーヴ紙に刷られている。上下耳付。文字入れは手書き。菅井はこの年の10月に再びル・ジャンドル画廊で、今度は詩人ジャン・クラレンス・ランベールとの最初のコラボレーションである詩画集「果てしなき探求(La Quete Sans Fin)」とコルネイユが挿絵を描いた詩画集「彼女、それは夜明け」による二人展を開いている。

菅井は1950年代後半からパリを始めヨーロッパやアメリカの画廊で数多くの絵画や版画の個展を開催しており、当然のことながら告知用のポスターも制作していると考えられるが、1996年に阿部出版から出版された「菅井汲版画カタログレゾネ(Sugai Catalogue Raisonne de L'oeuvre Grave 1955-96)には図版の掲載やデータの記載がないため、その全体像を掴むことが出来ない。通常、版画の目録が編纂される場合にはポスターも収録されるのが普通なのだが。ともあれ、このポスターが菅井の最初期のオリジナル・ポスターのひとつであることは間違いない。

●作家:菅井 汲(Sugai Kumi, 1919-1996)
●種類:Poster
●サイズ:760x563mm
●技法:Lithograph
●紙質:B.F.K. Rives
●発行:Galerie H. Le Gendre, Paris
●印刷:Patris, Paris
●制作年:1957

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このポスターはラ・ル画廊(Galerie La Roue)で同時に開催された水彩画展(Gouaches)の告知も兼ねている。



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# by galleria-iska | 2011-05-31 18:41 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2011年 05月 30日

アラントン画廊の招待状「Les Portes de Craie」(1989)

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マラケ河岸の書店・画廊アラントン(Arenthon S.A.)で催されたアンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ(André Pieyre de Mandiargues, 1909-1991)の最晩年の作品「白亜の扉(Les Portes de Craie)」の展示会への招待状。この本は、「コブラ(CoBrA」の創設メンバーひとり、ピエール・アレシンスキー(Pierre Alechinsky, 1927-)の5点のエッチングと9点の飾絵(vignette)を付した挿絵本で、菅井汲の晩年のエッチングの版元でもあるパリの印刷・出版社、R.L.D(Robert et Lydie Dutrou Editions-SARL, Paris)から限定205部で出版された。

●作家:André Pieyre de Mandiargues(1909-1991)/Pierre Alechinsky(1927-)
●種類:Invitation
●サイズ:205x149mm(205x298mm)
●技法:Letterpress
●紙質:Arches
●発行:Arenthon S.A.(Galerie Arenthon), Paris
●制作年:1989


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# by galleria-iska | 2011-05-30 23:07 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2011年 05月 28日

ベルナール・ビュッフェの招待状「Vézelay. Colline Éternelle」(1968)

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フランスのブルゴーニュ地方、ヨンヌ県の古都で、中世自由都市のひとつであるヴェズレーは1979年、「ヴェズレーの教会と丘」という名で世界遺産に登録されている。村の中心は丘の上に築かれ、その頂きにはバジリカ式の教会堂で、「マグダラのマリア」のためのサント=マドレーヌ大聖堂(Basilique Sainte-Madeleine de Vezeley)が建つ。この村はまた、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の始点となっており、ヴェズレーから国境を越え、イベリア半島北西部に続く「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」として世界遺産に登録されている。

この招待状は、ヨンヌ県の知事および県議会議長主催で、1968年5月31日にジョルジュ・ポンピドー首相出席のもと催された観劇の夕べのために制作されたもので、21世紀を待たずして自らの命を絶ったベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet, 1928-1999)が、表紙絵として、招待客を迎える場所となったサント=マドレーヌ大聖堂を描いている。演目はアカデミー・フランセーズの会員であるモーリス・ドリュオン(Maurice Druon, 1918-2009)作のによる「ヴェズレー、永遠の丘-音と光」。この表紙絵をもとに、ビュッフェの刷り師であるシャルル・ソルリエが版を起こしたエスタンプ((lithographie d'interprétation=Interpretation lithograph)と告知用のポスター(530x330mm、限定800部)が制作された。尚、エスタンプとポスターでは背景色が空色に変えられている。

●作家:Bernard Buffet(1928-1999)
●種類:Invitation
●技法:Lithograph
●題名:Vézelay. Colline Éternelle
●サイズ: 255x180mm(255x360mm)
●印刷:Mourlot, Paris
●制作年:1968

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# by galleria-iska | 2011-05-28 18:42 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2011年 05月 28日

山藤章二のポスター「マカロニ金融」(1970年)

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その時々の世相を、ブラック・ユーモアのフィルターを通して見た似顔絵によって映し出す絵師、山藤章二(Yamafuji Shoji,1937-)氏は、ひとつ年上で20世紀を代表するポスター作家である横尾忠則(Yokoo Tadanori, 1936-)氏と同様、ポスター制作が創作活動の原点となっている。同じ時代に生き、同じ方向を目指していたはずの二人は、ポスターをスプリングボードにして、各々独自の制作スタイルを築き上げた、と言える。横尾氏は1958年、当時デザイナーの登竜門であった「日宣美展」出品した「ふしぎなふえふき」で奨励賞を受賞し、1959年に当時大阪にあった(株)ナショナル宣伝研究所に入社する。翌年研究所の東京移転に伴い上京。ところが、一月で研究所を退社し、日本デザインセンター(NDC)に移ってしまう。一方、山藤氏は武蔵野美術大学デザイン科に在学中の1957年に「日宣美展」に出品。「地熱」で特選を受賞し、二年連続入賞を狙った1958年は落選するも、1960年には大阪国際フェスティバルで海外向けポスター・コンテストで特賞を受賞し、この二つの勲章を胸に(株)ナショナル宣伝研究所に入社。短い期間ではあるが横尾氏と机を並べる。山藤氏によれば(1)、横尾氏が在職中に一度、自作のポスターに対する意見を拝聴すべく、夕飯に招く。食事は固辞されるが、作品を見た横尾氏曰く「絵は達者やけど、レイアウトが問題やね。見る人の神経を落ちつかせないようにデザインした方が、おもろいんと違う?」と言われ、納まりのいい、かっちりしたデザインを目指していたことに気付かされ、ショックを受ける。とは言え、山藤氏はその年、広告電通賞(ポスター部門)制作者賞を受賞しており、横尾氏と比べれば受賞歴は遥かに多い。 その山藤氏も、1964年に研究所を退社し、フリーのデザイナーとなる。
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このポスターのイラストは、山藤氏が無名時代の1968年に、紀伊国屋ホールでの《劇団NLT》(2)の旗揚げ公演ともいえる喜劇「マカロニ金融-信用の哲学的考察」のチラシ用に描いたもので、1970年の紀伊国屋ホールでの再演に際しポスターに構成し直したもの。当時劇団(特にアングラ劇団)の公演ポスターの主流であったシルクスクリーンで刷られている。このポスターを見ると、横尾氏の言っていることが分からなくもない。山藤氏は1970年、講談社出版文化賞(第1回)さしえ賞を受賞し、デザイナーからイラストレーターに活路を見い出していくこととなる。

●作家:山藤章二(Yamafuji Shoji, 1937-)
●種類:Poster
●題名:マカロニ金融(Le Système Fabrizzi)
●サイズ:728x513mm
●技法:Silkscreen
●発行:劇団NLT(Neo Litterature Theatre)
●制作年:1970

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版上サイン。山藤氏がイラストに添えるサインは、デビューから1992年までは、「YAMAFuji'(年号)」の形である。

註:
1:「横尾忠則グラフィック大全」(1989年、講談社刊)所収の『1959 横尾忠則に関する〈怨念〉と〈尊敬〉 山藤章二』より。
2:1964年,文学座を脱退した俳優、賀原夏子、丹阿弥谷津子、中村伸朗、南美江らと、文芸演出部員、矢代静一、松浦竹夫らが顧問に岩田豊雄(獅子文六)、三島由紀夫を迎え、グループNLTとして発足。主に三島由紀夫作品を中心に公演活動を開始する。NLTは、「新文学座」を意味するラテン語「Neo Litterature Theatre」の頭文字からとったもので、岩田豊雄(獅子文六)が名付け親である。1968年に,三島、中村、南らが賀原らとの路線対立から「グループNLT」を脱退、「浪曼劇場」を結成したことにより、現在の「劇団NLT」に名称を変更、賀原を中心に、主にヴールヴァール劇(フランス語の風俗コメディ)を上演する『劇団NLT』として再発足。賀原の死後も、この路線は踏襲されている。第1回公演は演出に飯沢匡、客演に黒柳徹子を迎え、喜劇『マカロニ金融』(原作:アルベール・ユッソン「(Albert Husson (1912-1978):Le Système Fabrizzi,1963」を上演。この旗揚げ公演ともいえる作品で、芸術祭賞を受賞しており、1970年の再演でも、芸術祭奨励賞受賞している。

参考文献:
横尾忠則著「横尾忠則グラフィック大全」(All about Tadanori Yokoo and His Graphic Works)講談社、1989年1月16日発

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# by galleria-iska | 2011-05-28 17:05 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2011年 05月 24日

ロバート・ラウシェンバーグの招待状「Galerie Daniel Templon」(1985)

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1985年にパリのダニエル・タンプロン画廊(Galerie Daniel Templon)で開催されたロバート・ラウシェンバーグの個展のヴェルニサージュへの招待状。タンプロン画廊については、前にロバート・メイプルソープの招待状を取り上げた際に書いているので、今回は省く。この個展はロバート・ラウシェンバーグの「Salvage Series」による近作展であり、偶然にもメイプルソープ展と同じ年に開催されたものである。タンプロン画廊の招待状は常に、画廊の白亜の壁面を表す白のコート紙に同じ書体による文字の配置が行なわれ、作家や展覧会について一切の予断を許さない禁欲的なや美しさを放っている。

タンプロン画廊が紹介してきた主だった作家を見てみると、ウイレム・デ・クーニング、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、エルスワース・ケリー、ジャン=ミッシェル・バスキア、キース・ヘリング、サンドロ・キア、フランチェスコ・クレメンテ、ヨルグ・イメンドルフ、ヘルムート・ニュートン、リチャード・セラ、クリスチャン・ボルタンスキー、カール・アンドレ、ドナルド・ジャッド、ソル・ルウィットと、現代美術の様々な動向を俯瞰することが出来る。

そして現在は、ヴァレリオ・アダミ、アンソニー・カロ、ジム・ダイン、フランク・ステラ、ジョエル・シャピロ、ヤン・ファーブル、クロード・ヴィアラなど、約40人の作家と契約し、その展覧会をプロデュースしている。

●作家:Robert Rauschenberg(1925-2008)
●種類:Invitation(Carton d'Invitation)
●題名:Robert Rauschenberg Oeuvres Récentes
●サイズ:104x149mm
●発行:Galerie Daniel Templon, Paris

# by galleria-iska | 2011-05-24 16:30 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)