ガレリア・イスカ通信

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2010年 09月 13日

ロバート・メイプルソープのポスター/メイラー「Robert Miller Gallery」(1983)

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1983年にロバート・ミラー画廊で行なわれたロバート・メイプルソープの個展で話題を呼んだのが、悪魔を象徴すると言われる「逆さ五芒星」をバックに、革のコートに身を包みマシンガンを手にする自らの姿を撮った写真を用いたポスター/メイラーで、オープニングへの招待状にもなっている。メイプルソープは写真家としては例外的に数多く自画像を撮っているが、それは彼が写真教育を通過した写真家ではなく、プラット・インスティチュートにおける絵画、彫刻といった美術教育を通して獲得した美術家としての素地によるところが大きいと思われる。写真家の、一旦自己の存在を棚上げし、レンズという冷徹な目によって観察される対象の精神の奥深くまで踏み込んでいくという、自己の不在による行為とは異なり、多くの画家がそうであるように、メイプルソープもまた、作品の主題として最も身近にあるのが自身の姿ということに何の疑いも抱いてはおらず、むしろ嘘偽りの無い存在としての自己の姿を通して、自らの魂の奥底を窺い知りたいという衝動に駆られたのではないだろうか。

翻って、昨今、生のままの自らを対象とはせず、コンストラクテッド・フォトとかステージド・フォトと呼ばれる、虚構空間を設定し、その中で他者を演ずる自己の姿を撮影する作家がいるが、ある者に扮することで自らを客体化し、仮の姿に投影された自己の内面を他者である自分が観察するという二重構造を設定する方法論は、現実との生の関わりに対してのある種のストレスを避けようとする意識の現れと言えなくもない。それは全てが複製され消費される時代において固有の生の意味が喪失してしまう危機をひとまず先送りするために、自らを複製された対象と化し、それを消費していく自己完結型消費構造の場を、写真に見い出したのかもしれない。

●作家:Robert Mapplethorpe(1946-1989)
●種類:Mailer/ Poster
●題名:Self Portrait(with gun and star),1982
●サイズ:685x510mm
●技法:Offset
●発行:Robert Miller Gallery, New York
●制作年:1983
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ポスター/メイラーは八つ折りにし、関係者や顧客に郵送された。
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# by galleria-iska | 2010-09-13 22:10 | ロバート・メイプルソープ関係 | Comments(0)
2010年 09月 09日

ロバート・メイプルソープ展招待状「Moderna Museet」(1993)

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ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplathorpe, 1946-1989)が亡くなって4年後の1993年にスウェーデンのストックホルム近代美術館で開催された回顧展『Robert Mapplethorpe European Retrospective』 のヴェルニサージュへの招待状。使われたのは、1985年の自画像「Self portrait with Horns」で、アルチュール・ランボーの詩集「地獄の季節」(A Season in Hell, Limited Editions Club,1986)に挿入するために撮影された作品。この回顧展は、1992年から1993にかけて日本各地を巡回した展覧会のヨーロッパ版。日本での展覧会は、教育(開催地各教育委員会の後援を得るため)および道徳的配慮により、メイプルソープのメイプルソープ所以たる作品が外されるという、相いも変わらぬ茶番が繰り返された。牙や爪のないライオンがごとき希釈された内容によってメイプルソープの美の背後に潜む彼の性の本質に慄き戦慄し得るのだろうか。

ことの本質は誰もが理解しているはず。それが生と死の間に横たわる、最大の存在証明であるがゆえに。人間が自然から限りなく遠ざかるための指標として創り上げた《神》という幻影を顕在化させるために、衰え、乾き、やがて朽ちていく不合理な存在としての肉体は精神の外に疎外され、自己の主体的な実在性は肉体の外に形成されることによってより純化され普遍性を獲得するに至る。肉体は情念(=混沌)の器、精神の仮の宿として覆い隠される。而して昼は闇、夜は光となり、残酷までに無防備かつ無表情の肉体は他者との交合の内に自らを客体化する。そしてこの客体化された肉体を手中に取り戻すため性的対象を内在化し、行為者としての自己と対象としての他者を同一化することにより、制度としての性における存在の喪失感から自らを救い出そうとするのが、ホモ・セクシュアルでありレズビアンである。

●作家:Robert Mapplethorpe(1946-1989)
●種類:Invitation
●サイズ:230x230mm
●技法:Offset
●発行:Moderna Museet, Stockholm, Sweden
●制作年:1993

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招待状の提示で三人まで入場可能とある。
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# by galleria-iska | 2010-09-09 23:32 | ロバート・メイプルソープ関係 | Comments(0)
2010年 09月 07日

キース・へリングのラジオ「The Pop Shop Radio」(1985)

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1986年のポップショップの開店に合わせ香港で製造されたAM/FMチューナー付きのプラスティック・ラジオ。キース・ヘリングの代表的なアイコンのひとつ“three-eyed face”が使われている。ブルーとブラック・フェイスの二種類用意され、ポップショップもしくはメールオーダーで購入することができた。パッケージデザインもキース自身が行なっており、トータルでキースのオリジナルプロダクトと捉えて良いのではないだろうか。

ただ、キース・へリング財団は現時点ではこのラジオをマルティプルともエフェメラとも捉えていないらしく、ヘリングが逆説的な意味でラジオの製造先に“贋物天国”と言われる香港を選んだのだとしたら、財団はまんまとヘリングの仕掛けた罠に引っ掛かったことになる。アンディ・ウォーホルのことを思い出してほしい。プレポップ時代のウォーホルは、私家版の絵本制作の際に、“blotted line technique ”と呼ばれる方法で描いたドローイングをフォトリトグラフで複製し、それを友人たちに水彩で着色させたり、時にはサインまで入れさせたのである。このことが意味するのは、アートの拠って立つ処が、形式や権威、道徳といったものからどれだけ自由でいられるか、ということであり、“香港”という場所が放つある種のいかがわしさが、アートにとって最もナーバスな問題のメタファーとして取り入れられているとしたら...

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●作品:The Pop Shop Radio
●ラジオ:103x103x35mm
●ケース:133x133x40mm
●製造元:The Pop Shop
●発売:1986

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# by galleria-iska | 2010-09-07 21:28 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2010年 08月 29日

ホルスト・ヤンセンの出版目録「Hans Christians Verlag」&「Hermann Laatzen」(1972)

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ハンブルクの印刷・出版業者ハンス・クリスティアンズは、素描家や銅版画家としてのホルスト・ヤンセンは勿論のこと、もうひとつの顔ともいえる、出版狂としてのヤンセンを語る上で欠く事のできない役割を果たしている。これはそのハンス・クリスティアンズから刊行されたヤンセンの著作の目録で、ヤンセンが1960年代から70年代初頭にかけて用いた亜鉛版エッチングによるヤンセンの年記入りのカット絵(自画像)が一点添えられている。厚手の用紙に、32センチという長さは、出版社の広告入りの栞や差し込み広告としてはかなり大きなもので、フォリオ版サイズ以上の出版物でないと用を足さない。しかし、敢えてそうすることで、そこには、広告用の印刷物でありながら、ビラやチラシの類とは違う何かを見る者に感じさせようとする作り手の狙いがあるように思われる。

●作家:Horst janssen(1929-1995)
●種類:Annoucement
●サイズ:320x137mm
●技法:Strichatzung
●発行:Hans Christians Verlag, Hamburg
●制作年:1972
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1960年代のヤンセンの仕事の中で、ポスターや案内状といったグラフックな要素の強い部分は、素描や版画に比べると片手間の仕事のように扱われてしまいがちだが、そこには素描や版画表現とは異なる文法を持った図像表現が見られ、ヤンセン生来の気質や時代背景を反映したものとして、昨今注目が集まり始めている。こちらはハンブルクの書肆へルマン・ラーツェンの、ヤンセンが1966年から始めた肖像画シリーズの広告として作られた、内三つ折りタイプの印刷物。上述のハンス・クリスティアンズのものよりも一年早い。広告は六ページから成り、表紙に肖像画シリーズの最新作を載せ、三ページをそれまでに出版された作品紹介に充て、残りの二ページをヤンセンに関するその他の出版物の紹介に割いている。印刷は、こちらもハンブルクの印刷所兼出版社、ハンス・クリスティアンズ。

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# by galleria-iska | 2010-08-29 22:31 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2010年 08月 27日

ホルスト・ヤンセンの案内状「Für Verena」(1969)

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                  《表紙》

ヤンセンが1969年にハンブルグの書肆へルマン・ラーツェンから出版した亜鉛版エッチングによる7枚組みの絵草子『悲哀と希望について(Über die Traurigkeit und Hoffnung,Ed.1000))』の出版と展示を告知する案内状。『悲哀と希望について』は、ヤンセンが、妻であったヴェレーナ・フォン・ベートマン=ホルヴェーク(1960年に結婚し1968年に離婚)のために制作した連作もので、離婚後に出版された。同じ亜鉛版エッチングで制作された案内状の表紙絵には、離婚し今は別々に住むヴェレーナとヤンセンが共に涙する肖像が描かれ、肩の部分に“ヴェレーナのために、1969年6月12日”という詞書きが書き入れられている。画面右下の余白に版上サインと年記。2ページに絵草子の広告、3,4ページは、ラーツェンの出版もしくは取り扱いの挿絵本、ポスター、絵草子と呼ばれる刷り物、折り本、画集などの目録となっている。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●題名:Für Verena(Verena von Bethmann Hollweg )
●サイズ:275x206mm(275x412mm)
●技法:Strichätzung
●発行:Hermann Laatzen, Hamburg
●印刷:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1969

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       《2~3ページ》
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       《4ページ》                            《表紙》
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# by galleria-iska | 2010-08-27 17:50 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)