ガレリア・イスカ通信

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2010年 07月 31日

キース・へリングのステッカー「Pop Shop」(1985)

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キース・へリングが芸術の逆説的提示として始めたポップ・ショップ、そのオープンに際しデザインしたトレードマークは、1966年にロイ・リキテンスタインが「ニューズウィーク」誌の表紙絵として描いた、爆発とPop!の文字の組み合わせによる『POP!』を直接的なインスピレーションとしつつ、リチャード・ハミルトンが1956年に制作したポップアートの源泉とも言われるコラージュ『Just what is it that makes our today's homes so different,so appealing』に精神的な感応を示している、と書いてみたものの、実際はどうなのであろうか。《Pop Shop》の文字は五芒星と呼ばれる守護の意味や星を示す図形の中に書き込まれている。へリングとの接点はないが、自然が創り上げた秩序とか調和を示す五芒星とそれを内接する正五角形に大きな関心を持っていたのが版画家の長谷川潔である。このステッカーでは、トレードマークを頭部に乗せた人物が描かれており、その胸に付けられ記号を“エックス”と見るか、“十字”と見るかによって、この人物が意味するものが異なってくる。ひとつはそれがキリスト的なものの表象として,もうひとつは自らが“ポップスター”になることへの意志の顕れとするものだが、へリングは、それを曖昧にすることで、二つの意味を同時に表現しようとしていたのではないかと思われる。そしてへリングは、このロゴマークを、ポップショップのイメージキャラター、つまりアイコンとしてシンボライズすることによってイメージの浸透性をさらに高めようとしている。図像はチープなステッカーや商品を入れる紙袋、バッジ、ビニールバッグなどに大量に刷り込まれた、ポップアートの土壌となった大量生産・大量消費へとアートを還元し、その精神を循環させる一方、その心の奥底には、何かしら伝道的な気持ちが込められていたのではないかとも思える。

●作家:Keith Haring(1958-1991)
●種類:Sticker
●題名:Pop Shop
●サイズ:127x114mm
●技法:Silkscreen
●発行:Pop Shop, New York
●制作年:1985



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# by galleria-iska | 2010-07-31 22:17 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2010年 07月 23日

ホルスト・ヤンセンのポスター「Drucken」(1968)

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ヴェネツィア・ビエンナーレで版画大賞を受賞した1968年にハンブルクの印刷所クリスチアンズ(Hans Christians Druckerei und Verlag, Hamburg)の依頼で制作した広告ポスター。亜鉛版エッチング(Strichätzung)による作品で、真紅の衣装を身に着けたヤンセンがヌードの妻ヴェレーヌと共に描かれている。この年ヤンセンは七年連れ添った妻のヴェレーヌと離婚することになるのだが、ヴェレーヌへの想いを、版画集、デッサン、亜鉛版エッチング集、そしてこの印刷所の広告と、赤裸々に吐露している。このポスターでもそうだが、ヤンセンの描くヴェレーヌは、いつも前髪を垂らし片目だけを覗かせている。裏側に印刷所の広告文。

●作家:Horst Janssen
●題名:Drucken
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●サイズ:430x277mm
●発行:Hans Christians Druckerei und Verlag, Hamburg
●制作年:1968
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             画面右下に入れられた版上のサインと年記。
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                       シート裏側の広告文
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# by galleria-iska | 2010-07-23 21:11 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2010年 07月 20日

ホルスト・ヤンセンの年賀状「Prosit Neujahr 1968」

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ホルスト・ヤンセンが、1967年に続き、1968年の年賀状として制作した折り本形式の絵本で、ドイツの作曲家カール・オルフが作曲した子供のための音楽(教育音楽)のうちのひとつ『Ballade vom Herrn Latour』を、ヤンセンが蛇竜が守る高く深い塔の中にひとり座る伯爵の娘を助け出すという、中世の騎士物語風の童話に仕立てたもの。それぞれのパネルの詞書きの末尾には、乾杯の歌として知られる"Vive L'Amour"の、"Vive la, vive la, vive l'amour!"(万歳、万歳、愛に万歳!)というフレーズが添えられている。限定200部で、最初もしくは五番目のパネルに鉛筆による署名、シートの裏に限定番号が付されている。ここで取り上げたものは無署名のもの。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Leporello(Holding booklet)
●題名:Ballade vom Herrn Latour
●サイズ:320x175mm(320x860mm)
●技法:Strichätzung (Zinkätzung)
●印刷:Druck Christians, Hamburg
●制作年:1967
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# by galleria-iska | 2010-07-20 22:32 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2010年 07月 20日

ホルスト・ヤンセンのポスター「Ersatz Bilderbogen」(1967)

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1960年代後半にハンブルクの書肆へルマン・ラーツェン(Hermann Laatzen, Hamburg)から刊行されていたホルスト・ヤンセンの「絵草子」シリーズの増刊号で、亜鉛版エッチングで制作されている。亜鉛版エッチングは通常、影絵のように白と黒だけで表現されることが多いが、ヤンセンは二色刷りにも挑戦しており、なんとこの作品では三色刷りを行なっている。

まず純白で下地を作り、その上にオイスターホワイトという無彩色の色を重ね、最後に黒を乗せることで、彩度は低いながらも、視覚的にはコントラストの強い色彩感を獲得している。これと同じような効果を作り出しているのが、ニキ・ド・サンファルが1966年のパリのイオラス画廊での個展のために制作したリト刷りのポスターで、ヤンセンと同じようにまず純白で下地を作ってから、その他の色を重ね刷りしている。ヤンセンのポスターはその質感から“リト刷り”と表記されることが多く、一方、ニキのポスターはシルクスクリーン印刷のような発色を得ている。このポスターでも、リト鉛筆やクレヨン使って描いたような中間調の部分が認められることから、ドイツ国内の画廊でさえリトグラフと表記しているところがあるが、よくみると小さな点の集まりであることが判り、ヤンセンの集中力の凄さを垣間見ることができる。画面右下角に版上サイン、その左側に制作年月日(1967年5月5日)

●作家:Horst Janssen
●題名:Hermann Laatzen - Ersatz Bilderbogen
●サイズ:423x613mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●出版:Hermann Laatzen, Hamburg
●制作年:1967
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画面右下角の部分。人物の足元に鉛筆による署名が見える。
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# by galleria-iska | 2010-07-20 21:39 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2010年 07月 19日

ホルスト・ヤンセンの絵本「Hase und Igel」(1968)

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ホルスト・ヤンセンの折り本仕立ての絵本。四枚のパネルで構成され、絵の周囲には縁枠が付けられており、まるで日本の屏風を模したような造り。但し、パネルは左から右へ進む。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Leporello(Holding booklet)
●題名:Hase und Igel
●サイズ:287x180mm(287x705mm)
●技法:Offset
●発行:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1968

ヤンセンがグリム童話の「ウサギとハリネズミ(Der Hase und der Igel)」の話を翻案したもので、ウサギとハリネズミの立場が逆転している:

“ある秋の朝、ミュンスターのハリネズミのシュタッフスはブクステフーデ(1)の印刷屋クリスティアンズの家の前でに立っているウサギのボドニと出合う。身体の不自由なシュタッフスは「おはよう」とボドニに声をかけた。と言うのも、(三本足の)シュタッフスも、片耳しかないボドニたちと同様、難儀していたからだ。そして、ボドニをミュンスターのレースに連れ出した...”

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最終パネルの右下に鉛筆でサインが入れられている。
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註:
1.ウィキペディアによると、ブクステフーデは「メルヘン都市」とも呼ばれ、ヴィルヘルム・シュレーダーの童話『ウサギとハリネズミ』(後にグリム兄弟によって採録された)のレースはブクステフーデが舞台。シュレーダーは元々、よく似た「ベックスヘヴェーデ」という名前で採取した、とある。
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# by galleria-iska | 2010-07-19 23:01 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)