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ガレリア・イスカ通信

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2019年 07月 20日

アンディ・ウォーホルのポスター「Cow:Musée d'Art Moderne de la Ville de Paris」(1970)

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某ファッション通販サイトを運営する会社社長で、美術品の収集家としても名を馳せるM氏が、ニューヨーク市のオークション会社サザビーズ(Sotheby's New York)で行われた売り立て「Contemporary Art Evening Auction, May 16, 2019」に出品した二作品のうちのひとつ、アンディー・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)が1964年に制作し、同年ニューヨーク市のレオ・キャステリ画廊(Leo Castelli Gallery, New York)で発表された絵画作品「Flowers」(Lot no.39, Estimate: US$1.500.000-2.000.000)(註1)が見積価格を大幅に上回るUS$5.674.250(=約6億2千2百8拾6万円)で落札されたことは、未だ記憶に新しい。この作品は奇しくも今回取り上げるポスターが作られた展覧会に出品された作品のひとつであることが判った。

フランスで制作されたこのポスターは、1970年12月16日から翌年1月14日にかけてパリ市立近代美術館(Musée d'Art Moderne de la Ville de Paris)で開催されたアンディ・ウォーホルの展覧会「Andy Warhol」の告知用に作られたもので、展覧会会場の壁紙として使われた「Cow」をモチーフとしている。この展覧会は、1970年5月のカルフォルニア州ロサンゼルス郡の都市パサデナにあるパサデナ美術館(Pasadena Art Museum, May 12-June 21)(註2)を皮切りに、シカゴ現代美術館(Museum of Contemporary Art, Chicago)、オランダのアイントホーヘンのファン・アッベ市立美術館(Stedelijk Van Abbe Museum, Eindhoven)に続いて開催された巡回展のひとつで、その後、ロンドンのテイト・ギャラリー(Tate Gallery, London)、ニューヨーク市のホイットニー美術館(Whitney Museum of American Art, New York)に巡回している。

このポスター、最近は見かけることもなくなってしまったが、今から30年ぐらい前までは、ウォーホルのオリジナル・デザインではなかったことから、単なる複製ポスターという扱いで、日本円にして千円足らずで購入することができた。ところが、今は複製(after)であっても、その資料的価値が見直されるようになり、市場価値も、凝った造りの展覧会図録(註3)とともに上昇曲線を描いている。それには、版画作品でさえも一般愛好家には手の届かない所にまで行ってしまった現在、画廊で扱える作品が極端に限られてきたことも、結果として価格上昇の要因とひとつとなっている。作品の評価とその市場価値は少なからず相関関係にあることは言うまでもない。両者は車の両輪がごとく、どちらか片方だけでは同じところをぐるぐる回るだけであり、その価値を押し上げる方向に進むことはできない。とは言え、それらは必ずしも普遍的なものではなく、時の流れとともに移り変わる趣味や評価の尺度によって、180度変わってしまうことは、そう珍しいことではない。20世紀が過去になりつつある中、キュビスムの創始者であるピカソと共に、ポップ・アートという美術運動の中心的存在として、その名を挙げられるウォーホルであるが、その持つ意味が時代を超えて受け継がれていく一方で、時代の要請を受け、どのように変化していくのだろう。

●作家:Andy Warhol(1928-1987)
●種類:Poster
●技法:Offset lithograph
●サイズ:660x470mm
●印刷:Imprimerie Mazarine, Paris
●発行:Musée d'Art Moderne de la Ville de Paris
●制作年:1970


註:

1.
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図版:Andy Warhol「Flowers」(1964)signed and dated 64 on the overlap. Silkscreen on canvas. 610x610mm.

2.パサデナ美術館(Pasadena Art Museum, Pasadena)は1953年、〈Pasadena Art Institute〉から名称を変更。1970年代になり、意欲的な展覧会と新館の建設を図ったことから財政難に陥り、1974年に多額の資金援助と寄贈を申し出た実業家ノートン・サイモンの名を取ってノートン・サイモン美術館(Norton Simon Museum)となり、現在に至る。
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図版::ウォーホルがパサデナ美術館での展覧会に向けて、洗剤のブリロ(Brillo)のパッケージ(Brillo Soap Pads)をモチーフにデザインしたオリジナルのシルクスクリーンポスター。制作はニューヨーク市のポスター・オリジナルズ(Poster Originals, Ltd., New York)が手掛ける。760x660mm。このポスターは何枚か所蔵していたのだが、知り合いに譲ってしまい、今は一枚も残っていない。現在の市場価値は千ドルから二千ドル、もしくはそれ以上。
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ポスターの右下にポスター・オリジナルズの版権とカタログ番号〈©1970 POL No.94〉が記載されている。

3.
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図版:同展の図録。12ページのアコーディオン・タイプの図録で、サイズは265x200mm(265x1200mm)。白地にピンクで刷られた「Cow」は、1974年に日本で開催された「ウォーホル展」のポスターに近い印象を受ける。
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図版:裏表紙はウォーホルの肖像写真。



# by galleria-iska | 2019-07-20 18:59 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2019年 07月 11日

キース・ヘリングのビニール・ポーチ「Vinyl zippeted pouch」(1985)

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キース・ヘリング(Keith Haring, 1958-1990)のアイコンのひとつ"Three-Eyed Smiling Face"を用いたグッズ(Multiple/Art object)は1982年のトニー・シャフラジ(Tony Schfarazi Gallery, New York)での個展の際に配られたステッカー(註1)を手始めに、AM-FM Radio(Blue/Black & Black/Red)(1985)(註2)、そして今回取り上げる"Vinyl zippered pouch"(1985)(註3)がヘリング自身によって出版されている。ラジオとポーチはヘリングがニューヨーク市に開いたポップ・ショップ(Pop Shop New York)用にデザインされたもので、それぞれ二種類の色違いが存在している。1987年には、エイズ予防のキャンペーン活動のひとつとして、"Safe Sex(安全な性行為)"を念頭に、二種類の"Condom Box"(註4)をデザインしており、そのうちのひとつに”Three-Eyed Smiling Face”が使われている。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Multiple/Art object
●題名:Vinyl zippered pouch(Three-Eyed Smiling Face)
●サイズ:250x253mm
●技法:Silkscreen(?)
●発行:Keith Haring for Pop Shop
●制作年:1985
●目録番号:#080(Listed on the first Pop Shop mail order poster/catalogue (1986) at $5.00.
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ビニール・ポーチの左端に"©1985 Keith Haring." のスタンプが押されている。
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裏側


註:

1.
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ステッカー(1982年)

2.
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AM-FMラジオ(1985年)

3.
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図版:オリジナルの外袋に入った状態のビニール・ポーチ。外袋は薄いビニールのため、残っているものは非常に少ない。製造は同じ年に制作されたAM-FMラジオと同様、台湾(Taiwan)である。(A black vinyl zippered pouch enclosed in a thin plastic outer bag printed in yellow with the Pop Shop logo and text that reads "© K. Haring 1985 Made in Taiwan." )

4.
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コンドーム・ケース(1987年)

# by galleria-iska | 2019-07-11 12:54 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2019年 06月 18日

ホルスト・ヤンセンのポスター販売カタログ(初版)「Janssen-Plakate und - Schmuckblätter」(1985)

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ハンブルクのザンクト・ゲルトルーデ出版(Verlag St. Gertrude GmbH, Hamburg)とリューベックのクンストハウス・リューベック館内にあるルシファー出版(Lucifer-Verlag im Kunsthaus Lübeck, Lübeck)との共同出版によるヤンセンのポスターとアートプリントの販売カタログ(Katalog lieferbarer)の第一集。この販売カタログは、その後、改訂・増補を繰り返し、ヤンセン没後の1996年に発行された第4版まで継続されていく。第一集は1982年にリューベックのクンストハウス・リューベックでヤンセンのポスター展(註1)が開催されたことを受けて編集されたものと思われる。現行で入手可能なオフセット印刷のポスターを掲載しており、原色図版とともにサイズと価格(DM)が記載されている。

表紙はヤンセンのオリジナルで、装飾が施されたペン(竹ペン?)が二つに分けて描かれており、ヤンセンのモノグラム(サイン)が添えられている。上半分は「私のカンディンスキー〈meine Kandinsky〉」、下半分は「私の北斎〈meine Hokusay〉」と、それぞれに対するオマージュと思える図柄となっている。標題「Plakate」の下には発行元である〈Antiquariat St. Gertrude Hamburg〉〈Kunsthaus Lübeck Lübeck〉の名が記されている。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Sale catalogue
●サイズ:297x210mm
●技法:Offet
●図版印刷:Repro- & Litho Werkstatt, Hamburg
●図録印刷:Kröger Druck, Wedel
●発行:Verlag St. Gertrude GmbH, Hamburg & Lucifer-Verlag im Kunsthaus Lübeck GmbH, Lübeck
●制作年:1985
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註:

1.1982年にリューベックのクンストハウス・リューベックでヤンセンの1978年以降のポスター66点を集めて開催された展覧会「66 Sechsundsechzig Janssen-Plakate」の図録
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# by galleria-iska | 2019-06-18 20:10 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2019年 06月 01日

映画監督、黒澤 明のポスター「36è Festival International du Film de Cannes」(1983)

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先日、テレビを見ていたら、アメリカの政治家ジェイ・インスリー(Jay Inslee, 1951-)第23代ワシントン州知事は5月25日までに、同州議会が4月に可決していた、人間の遺体の堆肥化を認める法案に署名したというニュースが流れた。その結果、同州の遺体の埋葬方法は、火葬、土葬の他に、三番目の選択肢として、堆肥化が加わった。このニュースで即座に思い出したのは、1973年に公開された「ソイレント・グリーン(Soylent Green)」という、チャールトン・ヘストン主演のアメリカのSF映画である。2022年(あと三年後!)の世界では、人口爆発により地球資源が枯渇し格差が拡大、富める者のみが自然の食物を摂る事がことができ、その他の者はソイレント社が生産するソイレント・グリーンという合成食品によって生きている。主人公は海のプランクトンから作られていることになっているソイレント・グリーンは実は人間の死体から作られていたことを突き止めるのだが、自らもソイレント・グリーンの材料にされてしまう運命に...。 先に可決・署名された法案も、堆肥化を先ず手始めとして、その後、食料へと拡大していくシナリオが裏では既に出来上がっているのかもしれない。人間の想像力によって描かれるSFは全てが絵空事というわけではない。人間の想像力に現実が追いついていくだけのことである。

という訳で、SF好きの自分は、SF映画以外の映画に関しては滅多に映画館に足を運ばないのだが、日本が世界に誇る映画監督で脚本家の黒澤 明(Akira Kurosawa, 1910-1998)の晩年の時代劇作品『影武者(Kagemusha)』(1980年)と『乱(Ran)』(1985年)は劇場のスクリーンで観た。その後、どういう訳だか、オムニバス形式の『夢(Dreams)』(1990年)にまで出掛けている。どの作品も自らの意志で出掛けた覚えがないので、親しい友人に誘われたのだろう。映画の内容は兎も角、黒澤映画は、その完ぺき主義が災いして、無声映画で観ている方が良いぐらい、いつも台詞が聞き取り難い。

今回取り上げるのは、「第36回カンヌ国際映画祭の公式ポスター(Official Poster for the 36th Cannes International Film Festival)」である。映画の宣伝ポスターに特段興味があるわけではないのだが、時折、画家がデザインを手掛けることがあるので、チェックを入れている。このポスターの野外掲示用のサイズ(基本フォ-マット:1600x1200mm)(註1)ものが、2008年4月に東京国立近代美術館フィルムセンターから独立した国立映画アーカイブの開館記念として開催された展覧会『国立映画アーカイブ開館記念:没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより』(期間:2018年4月17日-9月23日)に出品されていたので、目にした方もいるかもしれない。ポスターには、黒澤監督が、第33回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(Palme d'Or)に輝いた、1980年公開の『影武者(Kagemusha)』のイメージボードとして描いたものを用いており、もともと画家志望であったされる黒澤監督の色彩感溢れる出来映えに対する欧米映画界の敬意と評価の表れと見ることができるかもしれない。その棹立ちする馬に跨る勇猛果敢な武将の騎馬像は、黒澤監督が実際に目にしたかどうか分からないが、1977年に山形城跡の霞城公園内に作られた出羽山形藩の初代藩主である最上義光の騎馬像「最上義光公勇戦の像」を彷彿させるし、1999年にリトグラフとして出版されたものの中にはレオナルド・ダ・ヴィンチの「アンギアーリの戦い」の構図を彷彿させるものもあるので、黒澤監督の発想の源泉を辿ってみるのも面白いかもしれない。

●作家:Akira Kurosawa(1910-1998)
●種類:Poster
●サイズ:821x622mm
●技法:Offset
●発行:G.I.P.S.
●印刷:Imprimerie Saint-Martin
●制作年:1983
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イメージ右下横に入れられた漢字とローマ字の署名
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1955年、ジャン・コクトーによってデザインされたパルム・ドール(黄金の棕櫚)
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註:

1.出品リストによると、実寸は、1595×1185mmとある。

# by galleria-iska | 2019-06-01 14:01 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2019年 05月 24日

フィリップ・モーリッツの素描集「Mohlitz dessins」(1994)

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15世紀に金属細工法として発達、その後アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer, 1471-1528)の出現によって頂点を極める銅版画の直刻凹版印刷技法として定着したビュラン(burin)。フランス南西部の都市ボルドー近郊の町、サン=タンドレ=ド=キュザック(Saint-André-de-Cubzac)生まれの銅版画家フィリップ・モーリッツ(Philippe Mohlitz)は1965年、恩師と仰ぐ画家で銅版画家のジャン・デルペッシュ(Jean Delpech, 1916–1988)のパリのアトリエで銅版画を始めると、その古典的な銅版画の技法を駆使し、瞬く間に銅版画の世界での地位を確立する。モーリッツは、文明に対する警鐘なのか、一見時代錯誤にも見える様々なヴィジョンを紡ぎだし、見る者を驚嘆させると共に、その影響力によって、モーリッツ派ともいえる追随者を何人も生み出した。そのモーリッツが去る3月14日、生地のサン=タンドレ=ド=キュザック(Saint-André-de-Cubzac)で亡くなっていたことを知った。享年78。モーリッツ作品の愛好家のひとりとして、心から哀悼の意を表したい。

さて、この素描集は、ボルドーにある1886年創業の老舗書店モラ(La Librairie Mollat)が1993年にモーリッツの個展を開催したのを機に刊行した大型の画集で、1963年から1991年までの素描約140点を原寸大もしくは拡大図版によって紹介している。印刷には厚手のマット紙使われており、余計な反射がないため、印刷と分かっていても、実物を見ているかのような錯覚を覚える。ここに掲載されている素描の多くは、銅版画の完全な下絵(完成図)として描かれたもので、それらは驚異的なビュランの技法を使って、殆んど修正無しに、また左右の反転もなく、銅版画に置き換えられている。実際に銅版画と見比べてみるのも一興か。出版時の価格は200フラン(約4千円)。

●作家:Philippe Mohlitz(1941-2019)
●種類:Monograph
●題名:Mohlitz dessins
●サイズ:330x280x28mm
●発行:Mollat Éditions(La Librairie Mollat), Bordeaux
●印刷:Imprimerie Fanlac, Périgueux
●制作年:1994
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# by galleria-iska | 2019-05-24 21:03 | その他 | Comments(0)