ガレリア・イスカ通信

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2018年 02月 14日

フリードリヒ・メクセペルの版画集の図録「The Nobel Prizes」(1983)

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スウェーデン最南部の都市マルメ(Malmö)にあるボルイェソン画廊(Galerie Börjeson, Malmö)は北欧有数の版元として、マルク・シャガール、ジョアン・ミロ、サルヴァドール・ダリ、アンディ・ウォーホルのような世界的に知られる作家や、池田満寿夫、元永定正、加山又造、吹田文明、中山正といった日本人作家の作品を数多く出版しており、ミロの画集やレゾネの翻訳版の出版も行っている。今回取り上げるのは、画廊設立者のボルイェソン氏が長年暖めてきた企画で、1983年に出版されたノーベル賞を称える版画集「The Nobel Prizes」を紹介する図録で、ノーベル賞各賞(物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学)の歴代受賞者リストと共に、画廊がノーベル各賞をテーマとした作品制作に相応しい作家として依頼したドイツの画家で版画家のフリードリヒ・メクセペル(Friedrich Meckseper, 1936-)による6点の銅版画作品が紹介されている。今手元に二冊あり、画像のものは、メクセペルの版元のひとつで、コラージュとオブジェの作品集「Homo Ludens I-III」の出版も行っているクレーフェルトのペールリングス画廊(Verlag Galerie Peerings, Krefeld)から、版画集の宣伝も兼ねて送られてきたもの。

ボルイェソン画廊からは同じ年、日本のノーベル賞受賞者へのオマージュ(Japanese novel laureates portfolio)として、「具体美術協会」のメンバーであった故元永定正(Sadamasa Motonaga, 1922-2011)による5点組みのシルクスリーン版画集「ノーベル賞オマージュ:ゆかわ、ともなが、ふくい、かわばた、さとう」も出版されている。メクセペルの版画集は手が出せなかったが、元永の版画集を一部購入した。随分と高い送料を払わされたのだが、到着してみると、思いの外しっかりした造りのクラムシェル型の箱(Cramshell box)、いわゆる夫婦箱に収められていた。また、版画家の池田満寿夫(Masuo Ikeda, 1934-1997)のメゾチントによるスウェーデンの劇作家ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(J.A Strindberg,1849-1912)の悲劇「令嬢ジュリー」を題材にした同名の5点組み銅版画集も同じ年に出版されていて、こちらも一部購入した。知り合いの画廊に見せたところ、ふたつとも譲って欲しいと頼まれたので、箱だけ残ってしまったのだが、深さがあるので、版画やポスターの保管箱として重宝している。

●作家:Friedrich Meckseper(1936-)
●種類:Catalogue
●サイズ:283x215mm
●技法:Offset
●発行:Galerie Börjeson, Malmö, Sweden
●制作年:1983
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# by galleria-iska | 2018-02-14 21:00 | 図録類 | Comments(0)
2018年 02月 12日

フリードリヒ・メクセペルの銅版画「Drei Flaschen」(1967)

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1961年に東西冷戦下のベルリンからドイツ北部の都市ブレーメンの東約15kmにある芸術家村ヴォルプスヴェーデ(Worpswede)にアトリエを移し、ベルリンに再び移り住む1984年まで制作を続けた画家にして版画家のフリードリヒ・メクセペル(Friedrich Meckseper, 1936-)。迷路を初めとして、日時計、球、煙、壜といった、探究心をくすぐる謎を秘めたモチーフを組み合わせて描く作品は、その硬質な表現内容にも拘わらず、“書斎派”と思しき人種の知的好奇心を刺激し、1970年代から80年代にかけて日本でも大くの愛好家を獲得した。しかしながら、その様相はバブルの出現とともに一変してしまったようだ。“知的な遊び”というような大人の趣味性は色褪せ、絵画という虚構世界の構図が崩壊し、即物的な欲望に追い立てられる現在、メクセペルの作品を扱う画廊は数えるほどで、その価格もかつての10分の一ほどになってしまっている。

メクセペルの絵画空間は作家の関心の対象である“物”の組み合わせによって成立しており、シュルレアリスムの手法であるデペイズマンを意識したものでもなく、またアナグラムのごとき意味を転換させる作用はそこにはない。ただ、そこに何かしらの“付随的なもの(インシデント)”が組み込まれることで、静物画という静止した時空間に変化を与えている。

先に挙げたようなメクセペルの科学的な志向を反映していると思われる無機質な物を組み合わせた静物画は、どこかモランディの静物画の発想にも通じるものがあるようにも思われる。実際、1959年にはモランディの銅版画を思わせるモノクロームの銅版画作品「Flaschen」(Cramer 26)を描いている。ただ、モランディとは対照的に、正確に引かれた描線はいかにもドイツ的精神を感じさせるものがある。今回取り上げる、古いワイン壜のような、ずんぐりとした壜を描いた「三つの壜(Drei Flaschen)」は1967年に制作された銅版画で、それぞれの壜の左手前には色の異なる球体が置かれている。メクセペルにとって球体は完結した宇宙なのか、ひとつの観念の総体であるのか、いつも何かに寄り添うように置かれている。そこにアクアチントによる濃淡が空間を演出し、静物画を成立させているのだが、よく見ると、それも何かの枠組みであることが判る。1970年代、80年代を通して、私のような田舎者にとってメクセペルは高嶺の花であったのだが、その価格は今も緩やかに下降を続けており、20世紀美術が篩いに掛けられる中、もはやその下限に達しているのではないかとさえ思われる。今手元にあるのは、限定番号の振られていない、ドイツ語で試し刷りを意する"Probedruck”というもので、状態に難があるということで、何年か前に、ヨーロッパの業者からポスター並みの価格で手に入れたものである。前にも書いたが、メクセペルは版画家になる前に機関車の技師になろうとしていたほどの機械好きで、蒸気船を建造したり、ついには蒸気機関車を購入してしまうのだが、そんなメクセペルの正確な描線に感心しながらも、同時代性というか、作家が放つ磁力が弱まり、何かが抜け落ちてしまっているようにも思えてしまうのである。

●作家:Friedrich Meckseper(1936-)
●種類:Print
●題名:Drei Flaschen
●技法:Radierung(Strichätzung, Aquatinta, Kaltnadel, Sandpapier auf Kupfer)
●サイズ:365x498mm(Format:533x705mm)
●限定:75 + X
●発行:Edition Rothe, Heidelberg
●制作年:1967
●目録番号:Cramer 87
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陰影を付けたり、立体感を生み出すために使われるハッチングやクロスハッチングは、職人としての彫版師にとって必要不可欠な技法であり、デューラーのごとき超絶技巧とまではいかないにしても、メクセペルも巧みにこなしている。しかし一方で、画面から生気が失われ、一本調子になってしまうきらいがある。アクアチントによる陰影法はその弱点を補っているとも言える。
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# by galleria-iska | 2018-02-12 13:27 | その他 | Comments(0)
2018年 01月 21日

ルフィーノ・タマヨのポスター「Tow Hundret Years of American Growth 1776-1976」(1976)

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20世紀メキシコの画家ルフィーノ・タマヨ(Rufino Tamyo,1899-1991)のポスター「Two Hundred Years American Growth 1776-1976」を出版したニューヨーク市のトランスワールド・アート(Transworld Art, Inc., New York)は1968年、アレックス・ローゼンバーグによってニューヨーク市に設立された現代美術の版元。アレクサンダー・コールダー(Alexander Calder, 1898-1976), サルヴァドール・ダリ(Salvador Dali, 1904-1989), ロメア・ベアーデン(Romare Bearden, 1911-1988), ヘンリー・ムーア(Henry Moore, 1898-1986), マーク・トビー(Mark Tobey, 1890-1976)、 ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg、1925-2008))など数多くの作家の版画やポートフォリオ、マルチプルを出版したが、現在は、アレックス・ローゼンバーグ・ファイン・アート(Alex Rosenberg Fine Art)と名称を変え、版元として、また、その知識と経験を活かし、鑑定家としても活動を行っている。トランスワールドの頃から版画を購入していたが、当時の米ドルの為替レートは現在の二倍以上しており、購入にはなかなかの決断を要した。ところが、1980年代の後半、あるいは1990年代に入っていただろうか、ある日突然、名称変更に伴う在庫セールの案内と価格表が送られてきた。それでやっとヨーロッパの版元の価格との釣り合いが取れ、何度か注文をだした覚えがある。今回取り上げるタマヨのポスターを初めとして、ダリやアペル、ヘンリー・ムーアのポスターも出していたはずで、価格は概ね25ドルだったように思う。タマヨのポスターは、時を経て風化した壁画のようにも見えなくもないが、描かれた人物が靄の中に隠れ判然としないのが嫌われてか、10ドルという半値以下の価格が付けられていた。現在の価格は300ドルぐらいだが、果たしてどうなのだろうか。

●作家:Rufino Tamyo(1899-1991)
●種類:Poster
●題名:Two Hundred Years of American Growth 1776-1976
●サイズ:649x498mm
●技法:Lithograph
●印刷:Imprimerie Mourlot, Paris
●発行:Transworld Art, Inc., New York
●制作年:1976
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ポスターとは別に、限定175部のリトグラフの版画ヴァージョン「Hombre Oscuro」も出版され、アメリカ建国200周年の1976年に同社が出版したポートフォリオ「An American Portrait 1776-1976」に収められている。ポスター、リトグラフ共に、パリのムルロー工房(Imprimerie Mourlot, Paris)で刷られている。トランスワールド・アートはこの年、タマヨが開発したミクソグラフィア(Mixografia)を7点一気に出版している。

タマヨは1899年、メキシコ南部のオアハカ(Oaxaca)に生まれる。1917年、国立サン・カルロス美術学校(San Carlos Academy of Fine Arts)に入学するが、才能ある者の常か、一年通い、その後の三年は独学で絵を修得し、籍を離れる(卒業?)。1921年、メキシコ市にある国立民族学博物館の民族誌学部長に就任、そこでプレ・コロンビアンの物品に囲まれ、その後の制作の根底を成すプレ=コロンビアン(pre-Columbian:1532年のスペイン人の征服以前のアメリカ先住民)の象徴性の高い品々に囲まれ、次のように語っている。以下引用
:"It opened my eyes putting me in touch with both pre-Columbian and popular arts. I immediately discovered the sources of my work -- our tradition."
1926年、ニューヨークを訪れ、1919年設立の版画を専門とするウェィヘ画廊(Weyhe Gallery, New York)で最初の展覧会を開催、二年後の1929年、メキシコに戻るが、壁画家たちに受け入れられない主題がブルジョア的で迎合的であると思われ、絵画的なリアルとは何かを学ぶために、1937年、再びニューヨークに渡り、1949年まで制作活動を行う。彼の周囲には、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp, 1887-1968), スチュアート・デイヴィス(Stuart Davis, 1892-1964), レジナルド・マーシュ(Reginard Marsh, 1898-1954)や国吉康雄(Yasuo Kuniyoshi, 1889-1953)といった画家たちがいた。1949年、今度はパリに移住、版画作品も数多く制作、1959年には挿絵本の代表作ともいえる「聖ヨハネの黙示録(Apocalypse St. Jean)」(名古屋市美術館が所蔵している)も制作している。その年、メキシコに帰郷、1991年、メキシコ市で没する
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# by galleria-iska | 2018-01-21 18:01 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2018年 01月 15日

金子國義の挿絵「Alice's Adventure in Wonderland」(1973)

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背徳的とも言えるマルキ・ド・サド(Marquis de Sade, 1740-1814)やジョルジュ・バタイユ(Georges Bataille 1897-1962)のエロティシズム文学や聖書にも深く傾倒し、文学と絵画の結合という類を見ない耽美的な画風を構築した画家、故金子國義(Kuniyoshi Kaneko, 1936-2015)の名を一般にも知らしめる契機となった作品と言えば、イタリアの事務機メーカー、オリベッティ社の依頼で制作した絵本「不思議の国のアリス(Alice's Adventure in Wonderland)」を思い浮かべる人も多いかと思うが、挿絵のひとつに水彩によるヴァリアントが存在していることはあまり知られていない。周知のように、採用された挿絵は扉絵以外全て鉛筆で描かれたモノクロームの作品であるが、金子は、1971年にミラノのナビリオ画廊(Galleria del Naviglio, Milano)での展覧会(註1)で作品を目にし、彼に挿絵を依頼した、当時オリベッティ社の文化部長を務めていた著作家のジョルジオ・ソアヴィ(Georgio Soavi, 1923-2008)に、1973年に水彩で描いた挿絵を三点(註2)を贈っている。その内の一点がこれ。細部に若干の違い(註3)はあるものの、サイズは使われたものと同じであることから、金子は当初、挿絵を水彩で描くつもりがあったのかもしれない。一方、鉛筆画に水彩で着色した他の二点は、扉絵と描き方が似ていることから、扉絵の候補であった可能性が高い。

この水彩画の存在を知ったのは、これらの挿絵を2010年頃にイタリアのミラノで開催されたオークションで手に入れたイタリアの美術愛好家が、親切にも画像と資料用写真(註3)を送ってくれたからである。画面下の余白に鉛筆で《Kuniyoshi Kaneko '73》と署名と年記が入れられているのが見える。

●作家:Kuniyoshi Kaneko(1936-2015)
●種類:Illustration
●題名:Illustration for Alice's Adventure in Wonderland
●フォーマット:380x285mm
●技法:Watercolor
●制作年:1973
●来歴:Ex-collection:Giogio Soavi


註:

1.展覧会の図録が残されている:(Galleria del Naviglio, Milano "572a mostra, dal 4 al 16 marzo, prima esposizione all'estero")

2.
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送ってもらった3枚の写真画像。扉絵用と思われる挿絵の写真はイメージ部分に焦点を当てて撮影したもので、フォーマットは約380x280mmである。

3.
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二つを並べて見ると、その違いがよくわかる。
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# by galleria-iska | 2018-01-15 19:50 | その他 | Comments(2)
2018年 01月 12日

版画の景色展のチラシ(2~4/4)「A View of Prints(2)」(2017)

ある方のご厚意で、「版画の景色展」の残り三種類のチラシを送っていただいた。深く感謝申し上げる。写真画像をアップするので、ご覧頂きたい。

●種類:Flyer
●題名:A View of Prints - The Trajectory of the Gendai Hanga Center
●サイズ:297x205mm(572x205mm)
●技法:FM Screen
●発行:The Museum of Modern Art, Saitama, Saitama
●制作年:2017
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アンディ・ウォーホル「KIKU 2」1983年、技法:シルクスクリーン、サイズ:498x660mm、限定:300、出版:現代版画センター、東京《Andy Warhol "KiKU2"(F.S.II.308) Silkscreen print on BFK Rives, 498x660mm, Ed.300, published by Gendai Hanga Center, Tokyo, 1983》
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菅井汲「スクランブルC」(註1)1976年、技法:シルクスクリーン、サイズ:355x248mm、限定:150、出版:現代版画センター、東京《Kumi Sugai "Scrabble C"(HARA.265) Silkscreen print on KENT paper, 355x248mm, Ed.150, published by Gendai Hanga Center, Tokyo, 1976》
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ジョナス・メカス「セルフ・ポートレイト、ラコステ(サド侯爵の城)の日陰にて」1975年、技法:シルクスクリーン、サイズ:370x510mm、限定:75、出版:現代版画センター、東京《Jonas Mekas "Self Portrait, Lacoste(the Castle of Marquis de Sade)" Silkscreen, 370x510mm, Ed.75, published by Gendai Hanga Center, Tokyo, 1975》



註:

1.菅井汲の作品「スクランブルC」であるが、カタログ・レゾネの欧文タイトルは「Scrabble C」となっており、これを"Scramble"と読み間違えて「スクランブルC」と表記してしまったのだろうか。それとも、日本語のタイトル「スクランブルC」を英訳する際に、"Scramble" とするところを"Scrabble"としてしまったのだろうか。
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# by galleria-iska | 2018-01-12 18:42 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)