ガレリア・イスカ通信

galleriska.exblog.jp
ブログトップ
2018年 10月 17日

ホルスト・ヤンセンの絵手紙集「Briefe an Vau-Ha」(1991)

a0155815_18161764.jpg

ドイツはヘッセン州の最大の都市フランクフルト・アム・マインと接する小都市オッフェンバッハ・アム・マイン生まれの画廊主で出版人のフォルカー・フーバー(Volker Huber, 1941-)は1969年、地元オッフェンバッハ・アム・マインに版画や彫刻の出版を行う画廊(Edition und Galerie Volker Huber e.K.)を設立、ホルスト・アンテス、ブルーノ・ブルーニ、ルドルフ・ハウズナー、ペーター・パウル、パウル・ヴンダーリッヒ等の版元として、これまで数多くの作品を世に送り出している。フォルカー・フーバーはホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)の専属画廊ではないが、画集やレゾネの出版も行っていることから、ヤンセンの版画付きの限定版作品集の出版を手掛けている。今回取り上げるのは、ヤンセンが1971年から81年にかけて、フーバーに宛てて送った絵手紙を一冊の本「ヴァウ=ハ(フォルカー・フーバーの愛称)への手紙、欲望、愛、友情の信号(Briefe an Vau-Ha:Lust und Liebe und Freundschaftssignale)」 に纏めたものである。この作品集については版画付きの限定版は出ていないようである。

今手元にあるのは1991年に出版された初版(1997年に再版)で、シュリンクラップが掛かったまま保管してあったもの。20年以上前にフォルカー・フーバーから直接購入したのだが、送料を節約するために五冊纏めて注文し、うち二冊は知り合いに譲り、残りの三冊は包装紙に包んだまま、棚の奥に仕舞いっ放しになっていた。今回、ヤンセン関係のものを確認するために取り出してきた次第。縦長の絵手紙を原寸に近いサイズで収録することで、そこに書かれたヤンセンの文章を読み取れるようにしたため、カレンダーのように縦長の体裁を取っている。2005年から翌2006年にかけて日本各地で開催された展覧会「ホルスト・ヤンセン展-北斎へのまなざし-」に合わせて企画・出版された「画狂人ホルスト・ヤンセン-北斎へのまなざし」(株式会社平凡社、2005年)の69頁所収の図版(註1)を見ていただけると分かるように、図版には二頁ないし三頁が使われ、それを折り畳んで納める方法が採られている。絵手紙には本画のための様々なアイデアや試行が綴られており、なかでも完成度の高いものについては、そのままポスターや本の表紙に使われている。

a0155815_18162983.jpg

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●著者:Horst Janssen
●編集:Volker Huber(1941-)
●題名:Briefe an Vau- Ha (Volker Huber): Lust und Liebe und Freundschaftssignale
●サイズ:275x245mm
●発行:Edition Volker Huber, Offenbach am Main
●制作年:1991

撮影用に一部開封したので、その画像をご覧頂きたい。
a0155815_20432591.jpg

a0155815_13405255.jpg

a0155815_122758100.jpg

a0155815_12425853.jpg

a0155815_13192763.jpg

a0155815_13213343.jpg

a0155815_13162060.jpg

a0155815_12492592.jpg

a0155815_13281654.jpg

a0155815_13243975.jpg

a0155815_13295367.jpg

a0155815_12321240.jpg

a0155815_12314364.jpg

a0155815_12312629.jpg

a0155815_1231128.jpg

a0155815_12305759.jpg

a0155815_12304261.jpg

a0155815_133543.jpg





註:

1.
a0155815_18164628.jpg
「画狂人ホルスト・ヤンセン-北斎へのまなざし」(株式会社平凡社、2005年)
a0155815_13423431.jpg
68~69頁
a0155815_1820714.jpg
「Briefe an Vau-Ha:Lust und Liebe und Freundschaftssignale」に関するテキスト部分
a0155815_18171535.jpg
ブックカバーにはヤンセンが1977年から78年にかけて制作したエロティックな水彩画の連作のうちのひとつ「フリーデリヒ」が表と裏に使われているが、ポルノグラフィックな内容を配慮してか、それぞれ画面の一部が巻きカバーとして内側に折り込まれている。
[PR]

# by galleria-iska | 2018-10-17 20:21 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2018年 09月 30日

清宮質文の蔵書票「Ex-Libris Kaz Tanaka(2)」(1961)

a0155815_2112586.jpg
   
木版画家の清宮質文(Naobumi Seimiya, 1917-1991)が1961年に小鳥をモチーフに制作した蔵書票「Ex-Libris Kaz Tanaka」は既に取り上げているが、今回は、日本書票協会(The Nippon Exlibris Association, Tokyo)発行の『愛書票暦1958-1961年』に所収のもので、和紙に刷られた1961年1月の暦に貼付されている。両者は同じ作品であるが、暦に貼付されたものには純白の和紙が使われ、作家手持分(注1)かと思われる方には生成りの和紙が使われている。

●作家:Naobumi Seimiya(1917-1991)
●種類:Ex-Libris
●題名:Ex-Libris Kaz Tanaka from 『Ex Libris Calendar Album 1958-1961』
●サイズ:56x50mm(フォーマット:86x80mm), Calendar:210x133mm
●技法:Woodblock print
●発行:The Nippon Exlibris Association, Tokyo(1957-) 前身:The Nippon Bibliophile Society, Tokyo(1943-1956)
●制作年:1961
a0155815_21121894.jpg
a0155815_21123020.jpg





注:

1.
a0155815_21404441.jpg

[PR]

# by galleria-iska | 2018-09-30 16:17 | その他 | Comments(0)
2018年 08月 31日

ジャン・アルプのポスター「Galerie La Hune」(1961)

a0155815_18573326.jpg

普段あまり飲むことの無い炭酸飲料が咽を通るときのチリチリとした感覚が妙に心地よく感じた今年の夏。小さな発見があった。

今回取り上げるのは、1944年に設立されたパリのラ・ユンヌ画廊(Librairie-galerie La Hune, Paris)が彫刻家で、画家兼版画家、そして優れた詩人でもあったジャン・アルプ(Jean Arp, 1886-1966)の版画の広告用に発行したポスター「Arp Estampes」で、アルプが1961年に制作したモノクロの木版画「Idole(偶像)」(註1)が使われている。現在10万円以上の値が付く版画作品と比べポスターの評価は明らかに低い。その原因となっているのは、欧米の画廊が間違ってその技法をリトグラフやシルクスクリーンとし、複製扱いにしているためであろう。実際は木版の原版を使っており、版画用のリーヴ紙(BFK Rives)に刷られている。

このポスターの刷りを行ったのは、ロベール・デュトル(Robert Dutrou, 1930-1999)の工房(Imprimerie Dutrou, Paris)で、彼は1944年、14歳の時にパリの有名な銅版画工房ラクリエール(Atelier de taille-douce Lacourière, Paris)に見習いとして雇われ、創業者のロジェ・ラクリエール(Roger Lacourière, 1892-1906)の下で、熟練した技量を習得し、ジョアン・ミロの信頼を得、その刷りを担当し、銅版画の出版を始めた人物である。デュトルは1952年に結婚、同じラクリエール工房の見習いだったベルギー人の刷り師アルド・クロムリンク(Aldo Crommelynck,1931-2008) と共に工房を創設するが、クロムリンクは1955年、彼の兄弟たちと自身の工房を開く。デュトル夫婦は1960年に入ると、パリのマーグ画廊の創始者である(Aimé et Marguerite Maeght)夫妻に乞われて、財団の銅版画制作のための工房を運営、1966年に彼らの息子アドリアーン・マーグ(Adrien Maeght)の版画工房(Atelier Arte, Paris)となる。デュトルのことを知っておれば、リトグラフやシルクスクリーンという技法は思い浮かばないはずであるが、見た目から拙速に判断してしまい、それが広まってしまうことで、正しい評価を遅らせている。

ジャン・アルプ (本名:ハンス・アルプ)。アルプは1887年、当時ドイツ領であったシュトーラスブルク(Straßburg)生まれ。ドイツやフランスの美術学校で学ぶ。1927年、ナチスドイツに異を唱え、フランス国籍を取得、1940年以降ジャン・アルプと名乗るようになる。そのアルプの独特の有機的なフォルムが何処から生まれてきたのか興味のあるところ。室伏哲郎が著した「版画事典」(東京書籍株式会社、1985年)によると、アルプは「青騎士」、「ダダ」、「シュルレアリスム」の運動に参加。「頭と心に平和と愛の詩を発生させる」というアルプの言葉は、彼を簡素平明な抽象フォルムへと導く。アルプが表現手段を決めず、内的精神の発露に求めるのは、マックス・エルンストとの言うところの『催眠術的言語』によるもので、その内的精神の造形には木版が最適として数多くの木版画を制作しているとある。以前取り上げたことがある、死の直後に刊行された19点の多色刷り木版画集「たがをはめ直された太陽(Soleil recerclé, 1962-1966)」はその好例であろう。

●作家:Jean(Hans) Arp(1886-1966)
●種類:Poster
●題名:Idol(Idole)
●サイズ:728x450mm
●技法:Woodcut(Bois gravé)
●紙質:BFK Rives
●発行:Galerie La Hune, Paris
●印刷:Imprimerie Dutrou, Paris
●制作年:1961
a0155815_18575133.jpg



註:

1.ジャン・アルプのオリジナル木版画「偶像」。1968年にパリのルイ・ブロデ出版(Louis Broder, Paris)から出版された版画集「日々の魔法」(註2)所収。
●Title:Idole:Bois gravé original, signé au crayon par l'artiste,
extrait de l'ouvrage "La Magie Quotidienne(The Daily Magic)"
●Edition:Louis Broder, Paris.
●Tirage:70 épreuves signées + XX épreuves signées
●Papier:Japon
●Dimensions de l'illustration:250x496mm
●Dimensions du papier (ou de la pièce):368x530mm
●Référence:Arntz n° 233

2.版画集「日々の魔法」は9点の銅版画、木版画、リトグラフからなる。サイズ:550x390mm、紙質:ミスミ楮紙(ピカソの作品のみMurier D'Annam紙)。作家と作品名は以下のとおり:
ジャン・アルプ(Jean Arp):Idol (Arntz 233)
ジュルジュ・ブラック(Georges Braque):Oiseau (not in Vallier)
アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti):Young Woman(Lust 192) & Figurines in the Studio(Lust 193)
アンドレ・マッソン(Andre Masson):Untitled (Cramer 79)
ジョアン・ミロ(Joan Miró):Untitled (Dupin 271)
パブロ・ピカソ(Pablo Picasso):Untitled(Bloch 1460)
ジャック・ヴィヨン(Jacques Villon):Untitled(not in G.& P.)
ザオ・ウーキー(Zao Wou-Ki):Untitled(Agerup 111)
[PR]

# by galleria-iska | 2018-08-31 13:19 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2018年 07月 30日

藤田嗣治のポスター「La Jeunesse:Les Trois Grâces」(1960)

a0155815_15582486.jpg

フランスの戦後復興期にあたる1951年に創設された比較的新しい美術展覧会(サロン)「Peintres témoins de leur temps/Artists Witness their Time(時代の証人・画家展)」は、1908年にウクライナからのユダヤ系移民の子としてパリに生まれ、画家となったイシス・キシュカ(Isis Kischka, 1908-1973)が、美術評論家のジャン・カスー(Jean Cassou, 1897-1986)と学芸員のイヴォン・ビザルデル(Yvon Bizardel, 1891-1981)と共に創設した美術展覧会で、1951年、《労働(Le travail)》をテーマに、アンリ・マチス、ジョルジュ・ルオー、ラウル・デュフィ、モイズ・キスリングらが参加した第1回展をパリのガリエラ美術館(Musée Galliera)で開催する。キシュカは自身も画家でありながら、サロンには出品せず、その運営に力を注いだ。この展覧会の告知用ポスター(註1)はフランスはもとより、日本でも数多く流通しており、リト刷りであることから、今でも人気が高い。今回取り上げるのは、レオナール・フジタ(Léonard Foujita, 1886-1968)こと藤田嗣治が手掛けた第9回展の告知用ポスター(註2)で、《青春(La Jeunesse)》をテーマに、1960年3月から5月にかけてパリのガリエラ美術館にて開催された。今手元にあるのは、テキストが入れられる前のもので、工房に残されていた見本刷りの一枚ではないかと思われる。ポスターの刷りを行ったパリの石版画工房、ムルロー(Imp. Mourlot, Paris, 1852~1997)の三代目のオーナーであったフェルナン・ムルロー(Fernand Mourlot, 1895-1988)の息子ジャック・ムルロー(Jacques Mourlot, 1933-)が1997年に引退し、経営権が譲渡された際に市場に流れた可能性が高い。版画やポスターは、試し刷りや予備を含めて、ある程度の刷り増しが存在するのだが、工房や刷り師、あるいは画家本人が換金のために売却(横流し?)することもあるようだ。ましてや工房自体が人手に渡るとなれば尚の事。フランスでは《affiche avant la lettre》として紹介され、収集家が珍重するので、必然的に割高となる。

藤田は告知用ポスターのために、同展への出品作の「花の洗礼(Baptême de fleurs)」をもとにオリジナル・リトグラフ「三美神(Les Trois Grâces)」を制作。ポスターと平行して版画ヴァージョンも二種類制作。ひとつはポスターと同じモノクロームの刷りで、リマーク(remarque)が入れられており、もうひとつは、多色刷りのリトグラフとなっている。晩年の藤田の描く女性像、中でも頭部(このポスターでは中央の女性)は、ある意味パターン化しており、少女も成人女性も、同じモデルというか、理想化された容貌を繰り返し描いている。

●作家:Léonard Tsuguharu Foujita(1886-1968)
●種類:Poster
●題名:La Jeunesse:Les Trois Grâces
●サイズ:782x560mm(728x479mm)
●技法:Lithograph
●印刷:Imp. Mourlot, Paris
●制作年:1960
a0155815_2034947.jpg
a0155815_20342243.jpg
                     藤田(Foujita)の版上サイン





註:

1.展覧会の告知用ポスターの制作に携わった画家たち(判明分):

開催年  画家名                                     テーマ
-------------------------------------------------------------------------------------------------

1951年:フェルナン・レジェ(Fernand Leger).................................Le travail
1952年:(開催されず)............................................................(pas de salon)
1953年:アンリ・マチス(Henri Matisse).......................................Le dimanche
1954年:ラウル・デュフィ(Raoul Dufy)........................................L'homme dans la ville
1955年:ヴァン・ドンゲン(Kees Van Dongen)...............................Le bonheur
1956年:パブロ・ピカソ(Pablo Picasso).......................................Réhabilitation du portrait
1957年:ジャック・ヴィヨン(Jacques Villon)...................................Le sport
1958年:ベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet)............................Les parisiennes
1959年:アンドレ・ロート(André Lhote)........................................L'âge mécanique
1960年:レオナール・フジタ(藤田嗣治)(Léonard Foujita)..................La jeunesse
1961年:ジョルジュ・ブラック(二種類)(Geroges Braque)...................Richesses de la France
1962年:ベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet)............................Routes et chemins
1963年:マルク・シャガール(Marc Chagall)...................................L'événement
1964年:ヴァン・ドンゲン(Kees Van Dongen)................................L'amour
1965年:-..........................................................................Le pain et le vin
1966年:ジャン・カルズー(Jean Carzou).......................................Les français
1967年:イヴ・ブライヤー(Yve Brayer).........................................La chanson
1968年:ベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet).............................L'année 1967
1969年:ベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet)............................ Art et travail
1969年:-..............................................La recherche et les conquêtes de la science
1970年:コンスタンチン・テレスコヴィッチ(Constantin Terechkovitch)....Le rêve
1971年:-...........................................................................Beautés de l'Europe
1972年:アンドレ・ミノー(André Minaux).......................................Que l'homme figure ...
1973年:ジャン・ジャンセム(Jean Jansem).....................................La vie des choses
1974年:-...........................................................................La rue
1975年:イシス・キシュカ(Izis Kischka)........................................Comme il vous plaira
以下省略

2.
a0155815_11292867.jpg
図版:第9回「時代の証人・画家展」の告知用ポスター。725x476mm。
a0155815_12414250.jpg
同展の招待状
a0155815_1242036.jpg
図録(特装版)
a0155815_12421481.jpg
扉絵
[PR]

# by galleria-iska | 2018-07-30 21:28 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2018年 07月 16日

レイモン・サヴィニャックの表紙絵「Nouvel Observateur, No.110」(1966)

a0155815_18142217.jpg

昨日は炎天下の中、連れ合いの車に同乗し、三重県立美術館で開催中の展覧会「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」に出掛けた。駐車場には遠方(主に関西圏)からの来館者の車が何台も止まっており、人気の高さを垣間見た。10年ぐらい前にサヴィニャックのブームがあったように記憶するが、今ではすっかり鳴りを潜めている。汗をかきかき階段をのぼって中に入ると、空調が効いていて、ひんやりと気持ちが良かったのだが、それも最初のうち。日曜日にも拘わらず、暑さのせいなのか、はたまた県内での知名度が低いのか、観客はまばらで、作品の細部までゆっくりと観察することが出来たのは良かったが、作品を見ていくうちに寒くなってしまった。

パリ市中に貼られた野外掲示用ポスターの基本フォーマットは160x120cm(実際はそれより小さくなることが多い)で、それが120x80cm、80x60cm、60x40cmとサイズを刻んでいくのであるが、今回の展覧会にはその基本フォーマットを何枚も組み合わせた巨大なサイズのものが何点も展示されており、見応えがあった。サヴィニャックはフランスのアール・デコを代表するグラフィック・デザイナー、カッサンドル(Adolphe Mouron Cassandre、1901–1968)が活躍した時代から少し下った1930年代後半にアールデコ様式のポスターを制作(註1)しているが、時既に遅しといった感で、注目を浴びることはなかったようである。サヴィニャックがポスター作家として世に出るのは1950年代で、「僕は41歳のときにモンサヴォンの牛のおっぱいから生まれたんだ」と自身語っているように、1949年に展覧会用に乳牛と石鹸を組み合わせて描いた「牛乳石鹸モンサボン(Mon Sabon au lait)」のポスターの原画がその切っ掛けを作った。サヴィニャックのポスターの多くは、ベルエポックと呼ばれる19世紀末からの流れを受け、リトグラフで印刷されている。健康的で明るいサヴィニャックの作品にはフランス人特有の風刺や皮肉、ブラックユーモアといった志向性はそれほど顕著ではなく、その辺の癖の無さに物足りなさを感じ、手を出したことはないが、リト刷りポスターを見ると、その手仕事感が時代の雰囲気のようなものを感じさせてくれるし、そこに漂う郷愁感もサヴィニャックの人気の要素のひとつとなっていたのかもしれないと思った。個人的には、以前招待状(註2)と図録を取り上げた、サヴィニャックが1978年にパリに創設されたポスター美術館(Musee De L'Affiche)の開館記念展のためにデザインしたポスター(サイズは117x82cm)が見たかったのだが、残念ながら今回の展覧会には出展されていなかった。ポスター以外にも、雑誌の表紙絵なども何点か見ることが出来た。ここで取り上げるのは、こちらも展覧会には出展されていないのだが、サヴィニャックが1966年のクリスマス時期に依頼を受けた1965年創刊のフランスの左翼系週刊誌『Nouvel Observateur』の表紙絵である。サヴィニャックは、この当時の雑誌の表紙デザインに沿うように、サンタ・クロースに国旗(ヨーロッパの国が中心であるが、アメリカ、中国、ソ連とともに、ベトナムの国旗も入っている)を繋げた旗を回転させて円を作らせている。

●作家:Raymond Savignac(1907-2002)
●種類:Cover art
●サイズ:343x275mm
●技法:Offset
●発行:Le Nouvel Observateur, Paris
●制作年:1966

a0155815_1814321.jpg
サヴィニャックの版上サイン。作家の署名は人生の節目節目で変わることが多いが、サヴィニャックのサインは初期から晩年まで殆んど変わっていない。


註:

1.サヴィニャックは1935年からカッサンドルが1926年に設立した広告デザイン事務所「アリアンス・グラフィック(Alliance Graphique)」でカッサンドルについてポスター制作を学んでいる。

2.
a0155815_12274894.jpg
パリのポスター美術館(Musée de l'Affiche→Musée de la Publicité)で1978年に開催された開館記念展の招待状
[PR]

# by galleria-iska | 2018-07-16 18:45 | その他 | Comments(0)