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ガレリア・イスカ通信

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2011年 04月 20日

ホルスト・ヤンセンのポスター/招待状「Lieber Herr Ketterer」(1966)

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1966年12月8日から1967年1月15日にかけて、ミュンヘンのヴォルフガング・ケッテラー画廊(Galerie Wolfgang Ketterer, München)主催により、ミュンヘン分離派の創始者の一人で、画家・版画家・彫刻家・建築家として活躍したフランツ・フォン・シュトゥック(Franz von Stuck、1863-1928)の旧邸、ヴィラ・シュトゥック(Villa Stuck)を会場に開かれた「ホルスト・ヤンセン展」のオープニングへの招待状。「Lieber Herr Ketterer(親愛なるケッテラー様)」という書き出しで始まる。1982年に行なわれたヤンセンの回顧展の図録によると、招待状は当時ヤンセンがポスター制作に用いていた亜鉛版エッチング(Strichätzung)よって制作され、薄い紙(辞書に使われるインディア・ペーパーのような質感)に刷られたとあるが、通常のポスター用紙に刷られたものも存在しており、比べてみると刷りに違いのあるのが分かる。前者にはヤンセンの亜鉛版エッチング(凸版印刷の一種)の特徴である印刷面のへこみとシート裏側の出っ張りがなく、描線の再現もシャープであることから、印圧(印刷圧)を下げて刷られたものかと思われる。

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薄い用紙に刷られたもの

描かれているのは画廊のオーナーのヴォルフガング・ケッテラー(Wolfgang Ketterer, 1920-2009)(左)(1)とヤンセン自身(右)。ヤンセンはここでは、素描家として資質を遺憾なく発揮しており、油絵のように造り込まれた肖像ではなく、自在な線描表現によって、スナップ写真のように、感情が表出された一瞬の表情を捉えている。そしてそれは、素早い線の集合と拡散によって作り出される陰影と的確なモデリングにより、生き生きとした実在感のある人物表現となっている。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster/Invitation(Plakate/Einladung)
●題名:Lieber Herr Ketterer
●サイズ:630x447mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●発行:Galerie Wolfgang Ketterer, München
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1966(22.11.66)

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版上サインと鉛筆よるモノグラムサイン。

註:
1:ドイツ表現主義の作家らのオークションで成功を収めたケッテラーは1954年、シュトゥットガルト(Stuttgart)に画廊を設立するが、1965年、フランツ・フォン・シュトゥックが自ら設計したヴィラ・シュトゥックに移り住む前に所有していた館に画廊を移転、ハンス・ベルメールやホルスト・ヤンセンの展覧会を企画する。

参考文献:
「Horst Janssen Retrospective auf Verdacht」 von Heinz Spielmann,1982

by galleria-iska | 2011-04-20 21:23 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)


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