2014年 05月 28日
自分は世に言うところの収集家ではないので、特定の対象に関心を持ち収集を行なうことはないが、雑食性の性か、あれやこれやと目に付いたものに気が行ってしまうところがある。それだけで終われば未だ良いが、性質が悪いことに、そこからまた横道に逸れてしまい、なかなか元に戻ってこれなくなってしまうのである。先日も前から気になっていたキース・ヘリング(Keith Haring, 1958-1990)が自身の誕生パーティーの招待状として制作したジグソー・パズルの購入資金のことで思い悩んでいるうちに、アールデコ時代の日本ではあまり知られていないポスター作家によるパテ社(Pathé)(註1)製の真空管式受信機(ラジオ)の宣伝用ポスターを基に作られたジグソーパズル、今で言うノベルティ・グッズに遭遇、その珍しさに惹かれて購入してしまった。このジグソーパズルはおそらく顧客や関係者に向けて配られたものかと思われるが、パテ社が製造した実用タイプの53型真空管式受信機の宣伝用ポスター(Pathé 53, Affiche de Georges Favre 1934. Imp. Delattre. 120x80 cm)のイメージをそのまま用いて作られており、収納用の紙袋にも同じイメージが使われている。紙袋に若干変色が見られるが、ジグソーパズルの方は印刷時の瑞々しさが失われておらず、経年による時代感と当事の人たちと同じ新鮮な驚きとを同時に味わうことができる。もとになったポスターの作者は、パリの国立美術学校で19世紀フランス・アカデミズムの画家で彫刻家のジャン=レオン・ジェローム(Jean-Léon Gérôme 、1824–1904)もとで学び、『挿絵入りのフィガロ紙』(Le Figaro Illustré)や『ル・ゴロワ紙』(Le Gaulois)で諷刺画家として働いた、ポスター作家のジョルジュ・ファーヴル(Georges Favre, 1873-1942)である。ファーブルはカッサンドル(Adolphe Mouron Cassandre, 1901–1968)(註2)がポスター作家として活躍した1927年から1935年にかけて数多くの商業ポスターを手掛けており、パテ社の一連の真空管式受信機(註3)の宣伝用ポスターを制作している。 ●作家:Georges Favre ●種類:Jigsaw puzzle ●サイズ:168x115mm(Paper sack:181x130mm) ●技法:Lithograph ●発行:Pathé ●制作年:1934 註 1.1896年にパリにフォノグラフ・レコードを販売する「パテ兄弟商会」(Société Pathé Frère)を設立したパテ4兄弟は、その後レコード製造工場を建てるなどして事業を拡大、また当事目新しかった映画にも目をつけ、撮影用の機材の製造を開始、20世紀初頭には、レコード製作の大手であるばかりでなく、世界最大の映画撮影機器製造会社となった。事業規模が大きくなりすぎたため、1918年に映画製作部門とレコード製作部門とに分社化するが、1928年にレコード製作部門が英コロムビアに買収され、映画製作部門も世界恐慌を前にして債務超過状態となり、1929年2月にルーマニア生まれのユダヤ人映画プロデューサー、ベルナール・ナタン(Bernard Natan)に買収される。ナタンはごく短期間でパテ社の経営を立て直し、再び映画産業での地位を回復すると、1929年11月、フランス最初のテレビジョン会社「Télévision-Baird-Natan」を設立、翌30年にはパリのラジオ放送局を買い、ラジオ帝国の建設のため、ラジオ放送の真空管式受信機の製作に乗り出す。 2.カッサンドルも1932年、パテ社の依頼で、“真空管式受信機”(図版A)と“蓄音機”(図版B)の2点の宣伝用ポスターのデザインを行なっている。 (A) 3.パテ社が1930年代に製造した真空管式受信機(ラジオ)のラインナップ広告。
by galleria-iska
| 2014-05-28 18:03
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