2014年 12月 28日
以前から探していたホルスト・ヤンセン(Horst Janssen,1929-1995)の初期のエフェメラを手に入れることが出来た。ヤンセンが1957年にハンブルクのザントナー画廊(Galerie Sandner, Hamburg)で12点の連作『ナナ(Nana Mappe)』を始めとする小サイズのエッチングによる個展(9月30日~10月末)を開いた際に作った二種類の内覧会の招待状(Einladung zur Ausstellung Kleine Radierungen in der Galerie Sandner, 29.9.1959)の内のひとつ。リトグラフで制作されており、刷りもヤンセン自身が行なっている。ヤンセンはこの時期、フランスのアンフォルメル運動の先駆者であり、アール・ブリュット(生の芸術)の提唱者であるジャン・デュビュッフェ(Jean Dubuffet, 1901-1985)の影響(註1)を強く受けており、招待状はデュビュッフェのそれを思わせる落書きのようなスタイルにヤンセンの執拗さが加わったものとなっている。 個展が開催されたザントナー画廊(Galerie Sandner, Hamburg)は1957年の夏、当時未だ国立美術大学(Hochschule für bildende Künste Hamburg )の学生だった画家ビルギット・ザントナーがハンブルクにある建物の地下室に開いた小さな画廊で、ヤンセンは設立当初からビルギットを助けるために画廊で開催される展覧会のポスターや招待状の制作を引き受け、自ら刷りも行なっている。この関係は1959年末の二人の結婚で頂点に達するが、その数週間後の突然の離婚によって解消されてしまう。ヤンセンはビルギットと別れた1960年、今度はヴェレーナ・フォン・ベートマン=ホルヴェーク(Verena von Bethmann-Hollweg)と結婚する。その結果、デュビュッフェの直接的な影響は次第に薄れていくこととなるのだが、その萌芽がこの展覧会の告知用ポスターに見出だすことが出来る。ヤンセンの女性遍歴は有名で、1955年から1960年までに三度の結婚をしており、それはヤンセンのスタイルの変遷とも重なっていて、ピカソのそれと似ていなくも無い。この時期のヤンセンの主要な作品はエドヴァルト・ムンク(Edwald Munch, 1863-1944)の模写から始まった木版画で、独自の画風を確立しており、評価も高いのだが、一方、時代とともにあったポスターや招待状といったヤンセンのグラフィッカーとしての仕事は、実はヤンセンの気取らない生のままの気質がそのまま現れたものとして興味深いのだが、未だ十分に注目されていないように思える。 この招待状は1960年代のヤンセンの折り本形式の絵本や年賀状の起点となった点においても興味深いものがある。 ●作家:Horst Janssen(1929-1995) ●種類:Invitation(Einladung) ●サイズ:211x530mm ●技法:Lithograph ●発行:Galerie Sandner, Hamburg ●限定:ca.50 ●制作年:1959 ●目録番号:Vogel.402 註: 1.ジャン・デュビュッフェが1949年に挿絵を制作、1950年に著者のジャン・ポーラン(Jean Paulhan, 1884-1968)とともに出版した「La Métromanie ou les dessous de la capitale 」がその典型と言える。
by galleria-iska
| 2014-12-28 14:11
| ホルスト・ヤンセン関係
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