ガレリア・イスカ通信

galleriska.exblog.jp
ブログトップ
2018年 05月 04日

ホルスト・ヤンセンの図録「Zeichnungen-Horst Janssen, Fotos-Thomas Höpker」(1967)

a0155815_1140515.jpg

以前から気になっていた写真の撮影者を特定してみたく取り寄せたのが、この図録。ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が1967年にハンブルクの契約画廊ブロックシュテット(Galerie Brockstedt, Hamburg)で行った素描の展覧会に際して刊行されたもの。その中にハンブルクの印刷所ハンス・クリスチアンズ(Hans Christians, Hamburg)で職人たちが掲げる刷り上ったばかりの亜鉛版エッチングによるオリジナルポスターと共に写るヤンセンの姿を捉えた写真があるのだが、この写真が何故か日本で1983年に行われたヤンセンのポスター展の図録の表紙(註1)に使われていたのである。最初、ヤンセン自身がこのような構図を設定し撮影を行ったのかと思っていたのだが、この図録を取り寄せてみて、その撮影者が後年、写真家の権利と自由を守り、主張することを目的とし、1947年にロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソンらによって結成された国際的な写真家集団マグナム・フォト(Magnum Photos)集団に正式参加することになるミュンヘン生まれの写真家トーマス・ヘプカー(Thomas Höpker, 1936-)(註2)であることが判った。この図録はヤンセンとヘプカーのコラボレーションの成果であり、ヤンセンの15点の近作素描とヘプカーによる13点の写真が収録されている。被写体の中心は、ヤンセンとその家族、1960年に結婚、1968年に離婚するヴェレーナ・フォン・ベートマン=ホルヴェークと二人の間に生まれた息子フィリップで、他に印刷所や酒場、収集家たちとの場面が収められている。荒れた粒子やブレ、また強いコントラストは、ドキュメント色の強いこの時代の写真の潮流だったように記憶する。

図録の装丁はヤンセン自身が行っており、そのアイデアは1969年にメルリン出版から刊行された、亜鉛版エッチングの挿絵とヤンセン自身のテキスト(詞書)からなる二冊の絵草紙「Hensel und Grätel」と「Paul Wolf + die 7 Zicklein」のそれへと繋がっていく。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Catalogue
●サイズ:331x238mm
●発行:Galerie Brockstedt, Hamburg
●印刷:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1967
a0155815_1143337.jpg

a0155815_2041764.jpg

a0155815_2051447.jpg

a0155815_1145298.jpg
a0155815_11453834.jpg
a0155815_11461595.jpg
印刷所の職人が掲げ持っているのは、刷り上ったばかりの、1966年にドイツ南西部に位置するバーデン=ヴュルテンベルク州の州都であるシュトゥットガルト(=シュツットガルト)のヴェルテンベルグ芸術協会(Württembergischer Kunstverein Stuttgart)で開催されたヤンセンの回顧展の告知用ポスター「Württembergischer Kunstverein Stuttgart」(註3)である。
a0155815_208795.jpg

a0155815_1147559.jpg
a0155815_1147225.jpg
a0155815_11473589.jpg
テキストの英訳:Photos: Thomas Höpker. The photos were taken in 1966: in the Warburgstr. 33((in and in front of the Janssens apartment house), in the Print shop Christians, in the pub, in the garden of the collector Siegfried Poppe, in the House of the collector Klaus Hegewisch and in the Galerie Brockstedt...


註:

1.
a0155815_21425754.jpg
1983年に宮崎県都城市の市立美術館で開かれた「Horst Janssen Plakate - ホルスト・ヤンセン ポスター展」(主催:都城市教育委員会、大阪ドイツ文化センター、宮崎大学映像を考える会)の図録。
●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Catalogue
●サイズ:250x265mm
●技法:Offset
●発行:Goethe-Institut Osaka, Osaka
●制作年:1983
表紙に使われたのは、ヤンセンが1960年代後半に集中して制作した亜鉛版エッチングによるポスターの制作現場であるハンブルクの印刷所、ハンス・クリスティアンズ(Hans Christians, Hamburg)で撮られた上掲の写真の一部。

2.トーマス・ヘプカー(Thomas Höpker, 1936-)はドイツ ミュンヘン生まれの写真家。現在はニューヨーク在住。ゲッティンゲンとミュンヘンの両大学で美術史と考古学を学び、卒業後1960年から63年まで雑誌(Münchner Illustrierte and Kristall)のスタッフ・フォトグラファーとして世界中を取材。1964年にはドイツの写真ニューズ誌『シュテルン(Stern)』の専属写真家となり、マグナム・フォトが写真の配給を始める。1968年、フリーの写真家となる。1978年からアメリカ版『GEO』誌のフォトディレクターを4年努め、1987年に一度ドイツに戻り、『シュテルン』にアートディレクターとして迎えられる。1989年、再びニューヨーク市に戻り、マグナムの正会員となる。2003年から2006年までマグナム・フォトの会長を努める。

3.
a0155815_122401.jpg


●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Württembergischer Kunstverein Stuttgart
●サイズ:847x594mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000(500/white paper, 500/brown paper)
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1966
●目録番号:Meyer-Schomann 19
[PR]

by galleria-iska | 2018-05-04 12:29 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)


<< ポール・デルヴォーのポスター「...      サム・フランシスのポスター「S... >>