ガレリア・イスカ通信

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2018年 05月 08日

ポール・デルヴォーのポスター「Paul Delvaux œuvre gravé - grafishe werk」(1972)

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ルネ・マグリット(Rene Magritte, 1898-1967)とともにベルギーのシュルレアリスムを代表する作家ポール・デルヴォー(Paul Delvaux, 1897-1994)が本格的に版画制作に取り組むのは、齢70間近(日本で言えば古希ということになる)の1965年後半からで、その制作方法は、版画工房に入り、石版に直接描画するというものではなく、転写紙を用いたものが大半である。それはベルギーのブリュッセルから版画工房のあるパリまで出掛けることさえ“彼にとっては何週間も考えあぐんでしまう大旅行”といわれる程であったからのようだ。版元となったのは美術史家のミラ・ジャコブ(Madame Mira Jacob Wolfovska, 1912-2004)が1955年にパリ六区セーヌ通りに開いた、19世紀後半から20世紀のデッサンや水彩、版画を専門とする画廊バトー・ラボワール(Galerie le Bateau-Lavoir, Paris)(註1)であった。リトグラフの刷りはムルロー工房で行われている。

今回取り上げるのは、日本では滅多に紹介されることのない、ジェームズ・アンソール(James Ensor, )がその生涯の大半を過ごしたベルギーのフラマン語圏に属する北海沿岸の海岸リゾート地、オースデンデ(Oostende)の画廊(Galerie L'Orangerie, Oostende)で1972年に開催されたデルボーの版画展(Paul Delvaux œuvre gravé - grafishe werk)の告知用ポスターである。テキストはフランス語とフラマン語の併記となっている。このポスターには通常版(註2)と限定版の二つヴァージョンがあり、今回のものは限定版の方で、展覧会のオープン時にされたものと思われるのだが、デルヴォーがボールペンを使って署名と日付を書き入れている。契約画廊との版権の問題によるものかもしれないが、ポスターには版画作品ではなく、デルヴォーの原画が使われており、印刷には、ライン・ブロックと呼ばれる、凸版エッチングに写真製版を用いた技法が使われている。

●作家:Paul Delvaux(1897-1994)
●種類:Poster
●サイズ:496x321mm
●技法:Line block
●発行:Galerie l'Orangerie, Oostende
●限定:125 + 10 H.C.
●制作年:1972
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                      《P. Delvaux, Oostende le 5 8(Aout), '72》
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註:

1.画廊の名前は20世紀初頭に、ピカソやモジリアーニ、ヴァン・ドンゲンらの画家が居住しアトリエを構えたモンマルトルにあった安アパート“洗濯船(Le Bateau-Lavoir)”から取られている。洗濯船と名づけたのは詩人で、画家、評論家でもあったマックス・ジャコブ(Max Jacob, 1876-1944)。故ジャコブ女史の交友関係は、画家や詩人、評論家(Georges Braque, Marc Chagall, Alberto Giacometti, Paul Delvaux, André Breton, René Char, Jean Paulhan, Jean Cassou)など多岐に渡っている。

2.
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図版:テキストの配置を変えてデザインされた通常版のポスター、470x320mm。



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by galleria-iska | 2018-05-08 19:59 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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