2019年 02月 21日
20世紀最大のポスター作家のひとりと言っても過言ではないドイツの鬼才ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が1978年から1982年(?)にかけて”描いた”66点のポスターを集めて開かれた展覧会「66 Sechsundsechzig Janssen plakate(66 Horst Janssen Posters)」の図録である。図録と言っても冊子同様、背に沿ってホチキスで留めただけの簡易的な製本である。ただ、装丁はヤンセン自身が手掛けており、表紙絵は鉛筆と色鉛筆だけで描かれたにも拘わらず、何とも心を揺ぶられる作品となっている。ヤンセンは1980年代に入ると、それまでの、どこかしら死の影を帯びたようにも見える、深く沈んだモノトーンに近い色調から抜け出し、血の色である赤色の色鉛筆を用い、生気の宿るドラマティックな画面へと変化していく。この表紙絵も赤い色が強烈なコントラストを生み出しており、見る者の目を捕らえて放さない。それはヤンセンの心境の変化によるものなのか、あるいは新しい画境への試みと見るべきか、いずれにせよ、その魔力に惹きつけられてしまったのは間違いない。この図録は、つい最近、ドイツ ハンブルクの古書店から手に入れたもので、店主が見落としたのか、案内には記されていなかったが、ヤンセンの署名と年記が入っている。 ポスターの展覧会は1982年、表現主義から現代美術までの版画作品を数多く収蔵するシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の港湾都市リューベックの美術館、クンストハウス・リューベック(Kunsthaus Lübeck)で開催されたもので、図録は美術館の中にあるルシファー出版(Lucifer Verlag im Kunsthaus Lübeck)から刊行された。翌83年には、増補改訂版として、76点のポスターを収録した総目録「Werkverzeichnis der Plakate 1978-1983」(註1)が同出版(Luciferlag Kunsthaus Lübeckに名称変更)から刊行されているのだが、この図録を見た後では、若干物足りなさを感じてしまう。 ヤンセンの1978年以前のポスターについては、前に取り上げたことがあるが、ヤンセンが1957年から1970年代初頭にかけて制作した、リトグラフ、亜鉛版エッチング、シルクスクリーンによる初期のポスターを含むオリジナル・ポスターの回顧展「Horst Janssen Plakate 1957-1978」が1978年、ヤンセンが幼少期を過ごしたオルデンブルクの市立美術館(Stadmuseum Oldenburg)で開催されており、その際、1957年から1978年までのポスターの総目録「Horst Janssen Plakate 1957-1978 Werkverzeichnis von Erich und Helga Meyer-Schomann, Stadtmuseum」を付した図録(註2)が刊行されている。従って、ルシファー出版が刊行した総目録はこの図録の続編ということになる。 ●作家:Horst Janssen(1929-1995) ●種類:Catalogue ●サイズ:210x297mm ●技法:Offset ●発行:Lucifer-Verlag im Kunsthaus Lübeck GmBH, Lübeck ●編集:Hartmut Frielinghaus & Franl-Thomas Gaulin ●制作年:1982 註: 1. 2.
by galleria-iska
| 2019-02-21 21:16
| ホルスト・ヤンセンのポスター
|
Comments(0)
|
アバウト
カテゴリ
はじめに 案内状/招待状関係 キース・へリング関係 ホルスト・ヤンセン関係 ロバート・メイプルソープ関係 ポスター/メイラー ヴィーノ・デッラ・パーチェ 図録類 その他 ホルスト・ヤンセンのポスター フォロニアム 版画関係 最新の記事
以前の記事
最新のコメント
検索
タグ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||