ガレリア・イスカ通信

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2018年 01月 21日

ルフィーノ・タマヨのポスター「Tow Hundret Years of American Growth 1776-1976」(1976)

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20世紀メキシコの画家ルフィーノ・タマヨ(Rufino Tamyo,1899-1991)のポスター「Two Hundred Years American Growth 1776-1976」を出版したニューヨーク市のトランスワールド・アート(Transworld Art, Inc., New York)は1968年、アレックス・ローゼンバーグによってニューヨーク市に設立された現代美術の版元。アレクサンダー・コールダー(Alexander Calder, 1898-1976), サルヴァドール・ダリ(Salvador Dali, 1904-1989), ロメア・ベアーデン(Romare Bearden, 1911-1988), ヘンリー・ムーア(Henry Moore, 1898-1986), マーク・トビー(Mark Tobey, 1890-1976)、 ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg、1925-2008))など数多くの作家の版画やポートフォリオ、マルチプルを出版したが、現在は、アレックス・ローゼンバーグ・ファイン・アート(Alex Rosenberg Fine Art)と名称を変え、版元として、また、その知識と経験を活かし、鑑定家としても活動を行っている。トランスワールドの頃から版画を購入していたが、当時の米ドルの為替レートは現在の二倍以上しており、購入にはなかなかの決断を要した。ところが、1980年代の後半、あるいは1990年代に入っていただろうか、ある日突然、名称変更に伴う在庫セールの案内と価格表が送られてきた。それでやっとヨーロッパの版元の価格との釣り合いが取れ、何度か注文をだした覚えがある。今回取り上げるタマヨのポスターを初めとして、ダリやアペル、ヘンリー・ムーアのポスターも出していたはずで、価格は概ね25ドルだったように思う。タマヨのポスターは、時を経て風化した壁画のようにも見えなくもないが、描かれた人物が靄の中に隠れ判然としないのが嫌われてか、10ドルという半値以下の価格が付けられていた。現在の価格は300ドルぐらいだが、果たしてどうなのだろうか。

●作家:Rufino Tamyo(1899-1991)
●種類:Poster
●題名:Two Hundred Years of American Growth 1776-1976
●サイズ:649x498mm
●技法:Lithograph
●印刷:Imprimerie Mourlot, Paris
●発行:Transworld Art, Inc., New York
●制作年:1976
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ポスターとは別に、限定175部のリトグラフの版画ヴァージョン「Hombre Oscuro」も出版され、アメリカ建国200周年の1976年に同社が出版したポートフォリオ「An American Portrait 1776-1976」に収められている。ポスター、リトグラフ共に、パリのムルロー工房(Imprimerie Mourlot, Paris)で刷られている。トランスワールド・アートはこの年、タマヨが開発したミクソグラフィア(Mixografia)を7点一気に出版している。

タマヨは1899年、メキシコ南部のオアハカ(Oaxaca)に生まれる。1917年、国立サン・カルロス美術学校(San Carlos Academy of Fine Arts)に入学するが、才能ある者の常か、一年通い、その後の三年は独学で絵を修得し、籍を離れる(卒業?)。1921年、メキシコ市にある国立民族学博物館の民族誌学部長に就任、そこでプレ・コロンビアンの物品に囲まれ、その後の制作の根底を成すプレ=コロンビアン(pre-Columbian:1532年のスペイン人の征服以前のアメリカ先住民)の象徴性の高い品々に囲まれ、次のように語っている。以下引用
:"It opened my eyes putting me in touch with both pre-Columbian and popular arts. I immediately discovered the sources of my work -- our tradition."
1926年、ニューヨークを訪れ、1919年設立の版画を専門とするウェィヘ画廊(Weyhe Gallery, New York)で最初の展覧会を開催、二年後の1929年、メキシコに戻るが、壁画家たちに受け入れられない主題がブルジョア的で迎合的であると思われ、絵画的なリアルとは何かを学ぶために、1937年、再びニューヨークに渡り、1949年まで制作活動を行う。彼の周囲には、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp, 1887-1968), スチュアート・デイヴィス(Stuart Davis, 1892-1964), レジナルド・マーシュ(Reginard Marsh, 1898-1954)や国吉康雄(Yasuo Kuniyoshi, 1889-1953)といった画家たちがいた。1949年、今度はパリに移住、版画作品も数多く制作、1959年には挿絵本の代表作ともいえる「聖ヨハネの黙示録(Apocalypse St. Jean)」(名古屋市美術館が所蔵している)も制作している。その年、メキシコに帰郷、1991年、メキシコ市で没する
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by galleria-iska | 2018-01-21 18:01 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2018年 01月 15日

金子國義の挿絵「Alice's Adventure in Wonderland」(1973)

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背徳的とも言えるマルキ・ド・サド(Marquis de Sade, 1740-1814)やジョルジュ・バタイユ(Georges Bataille 1897-1962)のエロティシズム文学や聖書にも深く傾倒し、文学と絵画の結合という類を見ない耽美的な画風を構築した画家、故金子國義(Kuniyoshi Kaneko, 1936-2015)の名を一般にも知らしめる契機となった作品と言えば、イタリアの事務機メーカー、オリベッティ社の依頼で制作した絵本「不思議の国のアリス(Alice's Adventure in Wonderland)」を思い浮かべる人も多いかと思うが、挿絵のひとつに水彩によるヴァリアントが存在していることはあまり知られていない。周知のように、採用された挿絵は扉絵以外全て鉛筆で描かれたモノクロームの作品であるが、金子は、1971年にミラノのナビリオ画廊(Galleria del Naviglio, Milano)での展覧会(註1)で作品を目にし、彼に挿絵を依頼した、当時オリベッティ社の文化部長を務めていた著作家のジョルジオ・ソアヴィ(Georgio Soavi, 1923-2008)に、1973年に水彩で描いた挿絵を三点(註2)を贈っている。その内の一点がこれ。細部に若干の違い(註3)はあるものの、サイズは使われたものと同じであることから、金子は当初、挿絵を水彩で描くつもりがあったのかもしれない。一方、鉛筆画に水彩で着色した他の二点は、扉絵と描き方が似ていることから、扉絵の候補であった可能性が高い。

この水彩画の存在を知ったのは、これらの挿絵を2010年頃にイタリアのミラノで開催されたオークションで手に入れたイタリアの美術愛好家が、親切にも画像と資料用写真(註3)を送ってくれたからである。画面下の余白に鉛筆で《Kuniyoshi Kaneko '73》と署名と年記が入れられているのが見える。

●作家:Kuniyoshi Kaneko(1936-2015)
●種類:Illustration
●題名:Illustration for Alice's Adventure in Wonderland
●フォーマット:380x285mm
●技法:Watercolor
●制作年:1973
●来歴:Ex-collection:Giogio Soavi


註:

1.展覧会の図録が残されている:(Galleria del Naviglio, Milano "572a mostra, dal 4 al 16 marzo, prima esposizione all'estero")

2.
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送ってもらった3枚の写真画像。扉絵用と思われる挿絵の写真はイメージ部分に焦点を当てて撮影したもので、フォーマットは約380x280mmである。

3.
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二つを並べて見ると、その違いがよくわかる。
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by galleria-iska | 2018-01-15 19:50 | その他 | Comments(2)
2018年 01月 12日

版画の景色展のチラシ(2~4/4)「A View of Prints(2)」(2017)

ある方のご厚意で、「版画の景色展」の残り三種類のチラシを送っていただいた。深く感謝申し上げる。写真画像をアップするので、ご覧頂きたい。

●種類:Flyer
●題名:A View of Prints - The Trajectory of the Gendai Hanga Center
●サイズ:297x205mm(572x205mm)
●技法:FM Screen
●発行:The Museum of Modern Art, Saitama, Saitama
●制作年:2017
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アンディ・ウォーホル「KIKU 2」1983年、技法:シルクスクリーン、サイズ:498x660mm、限定:300、出版:現代版画センター、東京《Andy Warhol "KiKU2"(F.S.II.308) Silkscreen print on BFK Rives, 498x660mm, Ed.300, published by Gendai Hanga Center, Tokyo, 1983》
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菅井汲「スクランブルC」(註1)1976年、技法:シルクスクリーン、サイズ:355x248mm、限定:150、出版:現代版画センター、東京《Kumi Sugai "Scrabble C"(HARA.265) Silkscreen print on KENT paper, 355x248mm, Ed.150, published by Gendai Hanga Center, Tokyo, 1976》
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ジョナス・メカス「セルフ・ポートレイト、ラコステ(サド侯爵の城)の日陰にて」1975年、技法:シルクスクリーン、サイズ:370x510mm、限定:75、出版:現代版画センター、東京《Jonas Mekas "Self Portrait, Lacoste(the Castle of Marquis de Sade)" Silkscreen, 370x510mm, Ed.75, published by Gendai Hanga Center, Tokyo, 1975》



註:

1.菅井汲の作品「スクランブルC」であるが、カタログ・レゾネの欧文タイトルは「Scrabble C」となっており、これを"Scramble"と読み間違えて「スクランブルC」と表記してしまったのだろうか。それとも、日本語のタイトル「スクランブルC」を英訳する際に、"Scramble" とするところを"Scrabble"としてしまったのだろうか。
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by galleria-iska | 2018-01-12 18:42 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2018年 01月 09日

版画の景色展のチラシ(1/4)「A View of Prints」(2018)

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松の内が過ぎると、毎年同じことを思う。最近は松飾り(門松)を立てる家も少なくなり、正月三が日を過ぎると、慌ただしく(!?)平時に戻ってしまう。スーパーなんぞは元日の朝九時から店を開け、正月気分に水を差すようなことを平気でやってのける。昔は、母親がお節を目一杯こしらえたので、松の内に平らげようと、食っちゃ寝、食っちゃ寝で体重が5kgも増えたこともあったが、この頃は一旦外に出ると、そんなのんびりした気分は、いっぺんに吹き飛んでしまう。この国の拠り所は経済しかないのだろうか...、と。

閑話休題、来週の火曜日(2018年1月16日)に埼玉県立近代美術館(The Museum of Modern Art, Saitama, Saitama)で始まる「版画の気色-現代版画センターの軌跡」展のチラシをいただいた。なかなか手の込んだデザインである。[版]というものの多様性を[文字組]に転換しようとする目論見が背後にあるのだろうか、字体のポイントを頻繁に変え、縦横混在する文字組みには、正直、困惑させられるのだが、一方で、文様らしきものへと変容し、読むという行為を敢えて二次的なものとするという点では、ユニークな試みかもしれない。とは言え、ここぞとばかりに詰め込まれた情報量の多さには驚かされる。PC無くしては処理できそうもない。欧米のそれは、日本人が発明した詩のひとつ「俳句」のような簡潔・簡素なものが圧倒的に多いが、日本のそれは、想像力が入り込む隙間のない、まるで分厚い[取り扱い説明書]を読むような煩雑さで、それだけで会場に行ったような気がしてくる、究極の親切なのだ。チラシは観音開きのような体裁になっており、開くと、内側には現代版画センターの活動を記した年表とともに、出品作家の名前が記載されており、まさに情報の洪水といった感がある。つくづく日本人は活字が好きな民族である。建前と本音によって成り立つ日本社会では、一瞬のうちに消えてしまう話言葉だけでは真意を汲み取るのは難しく、言葉の意味を主体とする中性化された存在(記号)へと変換することで、物事と平衡に向き合えるという側面があるからであろうと、勝手の想像してしまう。

内側にも幾つか図版が掲載されているが、表に一際大きく載っているのは、1981年に現代版画センターから出版された、虹のアーティストとして知られている靉嘔(Ay-O, 1931-)の「大きな透明な木」というシルクスクリーンの大型の版画作品。立体感すら感じさせるインクの乗りが妙に生々しく感じたので、拡大鏡を使って細部を確認したところ、オフセット印刷特有の網点が見えず、ひょっとしたらシルクスクリーンで印刷を行っているのかもしれないと、複製図版と知りながらも、ちょっと感動してしまった。もしそうであれば、美術館の意気込みの強さに感心してしまうのだが、実際はどうなのか確かめたく問い合わせたところ、オフセット印刷のひとつで、FMスクリーンという、微細な大きさの網点をランダムに分布させ、その密度によって濃淡を表現する印刷技術を用いたものであるとのことであった。これもデザイナーの拘りなのかもしれない。チラシは四種類作られ、靉嘔の他、元永定正(Sadamasa Motonaga, 1922-2011)、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)、ジョナス・メカス(Jonas Mekas, 1922-)の作品を使ったものがあるとのことであった。

展覧会のテーマとなっている現代版画センターの活動に関しては、よく知らない内に倒産してしまったので、残された活動記録で辿るほかないが、同社が版元となった作品は幾つか持っていたように記憶する。また、同社が倒産した後、1983年から翌84年にかけ開催された「アンディ・ウォーホル展」の際に刊行された図録『アンディ・ウォーホル展 1983-1984 オリジナル入りカタログ』を何冊か購入したのだが、手持ち用も知人に譲ってしまい、一冊も残っていない。ウォーホルが図録用に制作した“菊を”モチーフとするオリジナルのシルクスリーン・プリントが挿入されているためか、この図録、現在は随分と高値で取引されていると聞く。

●種類:Flyer
●題名:A View of Prints - The Trajectory of the Gendai Hanga Center
●サイズ:297x205mm(572x205mm)
●技法:FM Screen
●発行:The Museum of Modern Art, Saitama, Saitama
●制作年:2017
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靉嘔(Ay-O, 1931-)作の「大きな透明な木」1981年、シルクスリーン、90x150cm、限定85部
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by galleria-iska | 2018-01-09 13:11 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)