ガレリア・イスカ通信

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2018年 03月 27日

アンディ・ウォーホルのポスター「Space Fruit: Cantaloupes II」(circa 1979)

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懐かしいポスターが出てきた。ポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)が1979年に手掛けたシルクスリーンによる6点組の連作版画「スペース・フルーツ:静物(Space Fruit: Still Lifes)」所収の作品《Cantaloupes II》(F.S.198)を用いた版元の広告ポスター(註1)である。別の画廊の名前を入れた広告ポスターも同時に作られており、それらには(Cantaloupes I, Peaches, Watermelon)が使われている。またそれとは別に、版元の異なるオフセット印刷の別ヴァージョン(737x584mm/29"x23")も数種存在しており、少々紛らわしくなっている。

この連作版画を見たとき、ウォーホルが何でこんな作品を制作したのだろうかと訝しく思ったものだが、もう一人のポップ・アートの雄、ロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein, 1923-1997)が1974年に出版したリトグラフとシルクスクリーンによる6点組みの連作版画「Six Still Lifes Series」を意識したのだろうか。ウォーホルはこの連作版画を17世紀オランダで花開いた絵画のジャンルである“静物画”として取り組んでいる。とは言え、そこに何らかの象徴性や寓意が盛り込まれているわけではなく、構図、色彩、空間といったものに対するウォーホルなりの解釈と言えよう。ただ、二つに切り分けられたメロンの断面は性的なイメージを彷彿させなくもない。依頼主のマイケル・ジヴィアンはこの連作版画の制作に当時の金額で80万ドル(註2)、邦貨に換算すると一億九千二百万円を支払ったとあるのだが、本当にそうなのだろうか。もしそうだとすると、この連作版画(限定150部+XXX)の出版時の価格は2千5百ドルなので、販売数に応じて段階的に価格を上げていく方法を採っていなければ、まったく採算に合わない。因みに十年後の1989年には2万5千ドルまで値上がりしている。

●作家:Andy Warhol(1928-1987)
●種類:Poster
●題名:Space Fruit: Cantaloupes II
●サイズ:712x560mm/28"x22"
●技法:Lithograph
●発行:Michael Zivian Gallery, New York
●制作:circa 1979
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註:

1.
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図版:この連作版画の版元であるニューヨーク市のマイケル・ジヴィアン画廊(Michael Zivian Gallery, New York)が1981年(?)に発行した4種類のポスターの販売広告。価格は一枚30ドル($30=JPY7,200)で、送料は30ドルとあり、当時としては幾分高めの設定である。日本へは1980年代の後半、アートポスターはうちが取り仕切ると豪語した国内の額縁メーカーよって紹介されたように記憶する。版画と同じシルクスクリーンではなく、リトグラフで印刷されているのだが、それでもなかなか見応えのあるポスターであったので、4種類全て揃えたのだが、知り合いのお店の開店の際に頼まれ、その内の3点を、インテリアとして、版画のように額装して飾ってもらった。切り離したテキスト部分は、捨てるには惜しく、取ってあったのだが、何処にしまいこんだのか思い出せなくなってしまった。

2.内側から見たアンディー・ウォーホルに関する著作《Holy Terror Andy Warhol Close Up》に次のような記述がある(以下引用)
"The dealers, as usual, paid Andy in advance, probably splitting the $800,000 that Fred(Fred Hughes, Warhol's business manager) had set as the minimum for an Andy Warhol series. That was the amount the Michael Zivian Gallery in New York, paid for the Space Fruits series it commissioned and exhibited in May 1979."(from 「Holy Terror: Andy Warhol Close Up」 by Bob Colacelle, Harper-Collins Publishers, 1990)

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by galleria-iska | 2018-03-27 18:39 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2018年 03月 15日

清宮質文の蔵書票(4)「EX-LIBRIS Kaz Tanaka」

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“私は自分を詩人だと思っている”という言葉を残した木版画家、清宮質文(Naobumi Seimiya, 1917-1991)が1961年に制作した蔵書票。日本書票協会発行(The Nippon Exlibris Association, Tokyo)
の『愛書票暦1958-1961年』に所収。この蔵書票は前回取り上げた小鳥を題材とする作品「EX-LIBRIS Ella Engel」(1962年~64年)に先行する作品で、灰青色を基調としており、赤い木の実がアクセントになっている。ただしそこにあるのは、現実の鳥の姿を象ったものではなく、小鳥という存在に寄せた作家の想いである。その意味で清宮が好んで用いる青色は自己のうちにある詩的なイメージを表出するのに適しているのかもしれない。今手元にあるのは二代目で、海外の蒐集家から譲り受けたもの。

●作家:Naobumi Seimiya(1917-1991)
●種類:Ex-Libris
●題名:Ex-Libris Kaz Tanaka from 『Ex Libris Calendar Album 1958-1961』
●サイズ:56x50mm(フォーマット:86x80mm)
●技法:Woodblock print
●発行:The Nippon Exlibris Association, Tokyo(1957-) 前身:The Nippon Bibliophile Society, Tokyo(1943-1956)
●制作年:1961
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by galleria-iska | 2018-03-15 13:08 | その他 | Comments(0)
2018年 03月 09日

清宮質文の蔵書票(3)『EX-LIBRIS Ella Engel』(1960's)

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愛らしい小鳥の家族を描いたこの蔵書票は依頼主(票主)の家族を想像させる。木版画の詩人と謳われた清宮質文(Naobumi Seimiya,1917-1991)は1961年にも鳥をモチーフとする蔵書票を手掛けているのだが、そのときは一羽であった。この作品は、その後番いとなり家族が出来た、という時間経過も想像させる。

二点の作品は共に清宮の静謐な作品世界を象徴する青色を基調としており、小鳥が啄ばむ赤い木の実がアクセントになっている。日本書票協会(The Nippon Exlibris Association, Tokyo)から発行された『愛書票暦1961~1964年』に所収。1962年から64年の間に制作されたと思われるのだが、手元に資料が無く、残念ながら制作年を特定することが出来ない。

●作家:Naobumi Seimiya(1917-1991)
●種類:Ex-Libris
●題名:Ex-Libris Ella Engel from 『Ex Libris Calendar Album 1961-1964』
●サイズ:51x62mm(フォーマット:77x83mm)
●技法:Woodblock print
●発行:The Nippon Exlibris Association, Tokyo(1957-) 前身:The Nippon Bibliophile Society, Tokyo(1943-1956)

●制作年:1960's(1962~1964)
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蔵書票に作家が署名を入れることはあまりないが、この作品では作家は自身の名前のイニシャル《N》を画面右下に入れている。
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by galleria-iska | 2018-03-09 20:40 | その他 | Comments(0)
2018年 03月 03日

清宮質文の蔵書票(2)「Ex-Libris Ueda」(1969)

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静謐な画面に漂う詩情が時代の流れを超えて見る者に訴えかける木版画家の清宮質文(Naobumi Seimiya, 1917-1991)が手掛けた蔵書票(ex libris)は5点ほど知られている。これはその内のひとつで、日本書票協会(The Nippon Exlibris Association, Tokyo)発行の『愛書票暦:1969年~1972年』に所収。艶やかな色調が特徴の、ある意味清宮の画風からは最も遠い作品である。周知のように、蔵書票には誰が見ても分かるように、Ex-Librisという文字と蔵書の持ち主の名前を画面に入れるのが倣いである。日本ではEx-Librisや、そのカタカナ表記である“エクスリブリス”の他、“〇〇蔵”とか“〇〇蔵書”、また“〇〇愛書”という表記の仕方も多く見られる。その意味では、この作品はその約束事に沿っていないのだが、普通に考えれば、この蔵書票の依頼主の名前は“KURA”という人物で、“藏”という旧字体の文字が彫り込まれていると見ることができる。しかしながら、“藏”を依頼主の名前とは見ず、“〇〇蔵”の意と捉えるとすると、何かの理由、もしくは洒落で、敢えて名前を使わず、画面中の赤い丸-清宮がしばしば画面に描き入れる天体(月または太陽)ではないかと思われるのだが-と通常ならば依頼主と縁のある事物であるはずの何かの器(ガラス瓶あるいは焼き物?)のように見えるものとの組み合わせで依頼主の名前を言い表している可能性も考えられなくもない(註1)。しかしそれでは、依頼主の自己満足でないなら、見た者が持ち主の名前を推し量ることが難しいので、この見方には、ちょっと無理があるかもしれない。

●作家:Naobumi Seimiya(1917-1991)
●種類:Ex-Libris
●題名:Ex-Libris Ueda from 『Ex Libris Calendar Album 1969-1972』
●サイズ:38x29mm(フォーマット:49x41mm)
●技法:Woodblock print
●発行:The Nippon Exlibris Association, Tokyo(1957-) 前身:The Nippon Bibliophile Society, Tokyo(1943-1956)
●制作年:1969
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註:

1.こちらの推測の方が正解に近かった。この作品の制作意図について作家が語っている言葉が見つかったので、引用しておく:
「票主の上田という文字が簡潔で美しく見えますので、上田蔵そのままを絵にすることにいたしました。これは静物のつもりです」

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by galleria-iska | 2018-03-03 13:47 | その他 | Comments(0)